2021年8月19日木曜日

令和3年度「離島過疎地域振興部会」(第2回)開催

 2021817日、第2回「離島過疎地域振興部会」が開かれました。

会議では「離島における安全・安心の確保と魅力ある生活環境の創出」を中心に審議が行われました。


以下、上妻の発言要旨を記します。

離島における安全・安心の確保と魅力ある生活環境の創出(定住条件整備)

 

沖縄全域の地下水の保全と利用

水質調査だけ、あるいは特定の圏域(宮古圏)だけの対策で充分か?

地下水について、もっと踏み込んで沖縄県の方針を明確にすべき。

水循環基本法

20216月、水循環の中に‘地下水の保全と利用’を明記した改正「水循環基本法」が成立。自治体の条例制定も主眼に‘地下水マネジメント’が国と地方公共団体の責務として明確化された。

河川のない多数の島々を含め、地下水の適正な保全・利用は沖縄県の重要政策課題。

有害物質PFOS

有機フッ素化合物PFAS(PFOS、PFOAの合計値)による深刻な環境汚染が進行している。

20211月に県が公表した米軍基地周辺のPFAS汚染に関する水質調査結果では、嘉手納基地周辺の地下水で環境省暫定指針の60倍(3,000ナノグラム)、宜野湾市の湧き水で40倍(2,000ナノグラム、過去最高値)を検出。他方、2月には航空自衛隊那覇基地からのPFOSを含む泡消化剤の流出も発生。

使用も製造も禁止された‘永遠の化学物質’から地下水を守る。離島を含む沖縄全域の課題ではないか。今後を見据えた方針と施策を明確にすべき。

離島を含む廃棄物の広域処理

素案記載の「一般廃棄物と産廃のあわせ処理」「施設整備に係る市町村負担軽減」「広域化の促進」「輸送費の低減」「海岸漂着物対策」は妥当。

より考慮されるべき離島の現実は、①処理能力の限界、②高コスト構造、③環境負荷への脆弱性。

処理能力の限界と環境汚染の現実

素案では「高コスト構造」改善への取組(施設整備、輸送費等)は読み取れる。

しかし、離島とりわけ小・中規模離島の「処理能力の限界」は深刻な問題。ここにフォーカスした施策が求められるのではないか。

持続不可能な最終処分場問題、島の処理能力の限界に伴う環境汚染は現実に進行している。沖縄県としての認識と見解を伺う。

離島を含む広域処理と海上輸送体制

「複数市町村による広域処理の促進」は離島のゴミ問題解決への一つの解(具体策)と理解。

離島を含む広域処理の推進には海上輸送が不可欠。島嶼県の政策課題と考える。

離島を含む廃棄物の広域処理にあたって沖縄県が担う役割、また、海上輸送体制の充実について見解を伺う。

スマートアイランド新たなモビリティの導入など

「空港・港湾等の交通拠点を連結する道路整備を推進し、島内移動手段の連携接続に取り組む」旨、シームレスな島嶼型交通体系構築の一環として理解。

一方、「離島の条件不利性克服」に向けては、‘先端技術を活用した不利性の解消’、また、島嶼型モビリティの導入を含む‘スマートアイランド実現’への取組も記載されている。

モビリティ ✕ スマートアイランド

県外離島ではグリーンスローモビリティ(時速20km未満で公道を走る電動・低速の公共交通)や低コストの自動運転システムを導入する社会実験も実施されている。

「島内移動手段のシームレスな連携接続」への施策は、道路整備、バス路線の確保・維持だけではないのではないか?

MaaS

自家用車以外の交通手段を繋ぐMaaSMobility as a Service)は、シームレスな島嶼交通システム構築の一環として離島でこそ積極的に推進すべき。

離島地域への新技術の先行導入

今般、ドローン物流の実用化、空飛ぶクルマ(eVTOL)の本格導入への準備等も進展中。

離島の定住条件整備と条件不利性の克服にあたっては、新技術の積極活用と離島地域への先行導入が望まれる。計画への明確な位置づけを求める。


離島過疎地域の振興に係る成果指標等

 

離島観光

施策展開「持続可能で高品位な離島観光の振興」

施策「着地型観光プログラム等の定着」

成果指標「離島地域への入域観光客数及び一人当たり観光消費額」

‘量を追う観光から質を重視する観光へ’の転換を含め、離島観光の担い手/人材の育成を主眼とする指標を設定できないか。

関連施策「多彩で質の高いサービスを提供できる観光人材の育成・確保」の成果指標が「観光客の沖縄旅行に対する満足度」となっているが、いかがなものか。

*「観光人材の育成・確保」の達成状況を「観光客の満足度」で確認するのか?

人材の育成に関しては、研修や資格取得などの具体策もあり、総点検では「観光人材育成研修受講者数」が挙げられていた。

離島関係の受講者数、離島での研修開催件数、また、第3種旅行業の資格取得件数等を指標とすることも考えられる。

高品位な離島観光の振興と人材の育成について適切な指標を設定いただきたい。

テレワーク

施策展開「離島を核とする関係人口の創出と移住促進」

施策「離島におけるテレワーク、ワーケーション等の推進」

成果指標「国内客の離島宿泊客数」

指標を「テレワーク・ワーケーション推進施設の利用者数」に変更予定とのこと、適切な対応と考える。

克服すべき沖縄の固有課題「離島の条件不利性克服と持続可能な島嶼地域の形成」においても、‘離島におけるテレワークやワーケーションの促進’が明記されている。

テレワークに関しては、離島住民のテレワーク推進(環境整備、人材育成)がより重要ではないか。

雇用創造型のテレワーク人材育成ということでは、「離島ICT利活用促進事業(離島テレワーク人材育成補助事業)」が実施されている。

離島の新しい雇用創出を主眼とするテレワーク人材育成の指標を検討されたい。

離島過疎地域の人口

計画展望値(社会)「離島人口」

「離島人口」に加えて、以下の計画展望値を設定してはどうか。

(1)小・中規模離島の人口

37の有人離島から「宮古島」「石垣島」を除いた35島の人口

15の離島市町村から「宮古島市」「石垣市」を除いた13町村の人口

(2)離島過疎地域の人口

離島市町村と北部過疎地域4町村の19市町村

離島と北部過疎の19市町村から「宮古島市」「石垣市」を除いた17町村の人口


2021年8月5日木曜日

令和3年度「離島過疎地域振興部会」(第1回部会)開催

2021730日、沖縄県振興審議会「離島過疎地域振興部会」が開かれました。

委員は11名。部会長は嘉数啓琉球大学名誉教授。NPW代表理事・上妻は副部会長として参画しています。

201911月以来となる本会議では、本土復帰50年の節目の年から始まる「新たな振興計画(素案)」を中心に、今後の調査審議の内容などについて、報告、意見交換が行われました。

沖縄、東京ともに「緊急事態宣言」発出中のコロナ禍の状況下、上妻はオンラインでの会議参加となりました。

以下、上妻発言要旨

半世紀の時間軸の中で

復帰半世紀の節目に策定する新しい振興計画ということで、県内離島人口の推移を‘50年の時間軸’で振り返る。

1960年から2010年までの推移で、

・石垣市を除く全ての離島市町村の人口が減少

・離島市町村全体では24%の減少

・9つの町村で50%を超える人口減

といった現実がある。

1972年の復帰から50年となる2022年以降をどう考えるか。当部会の審議に関わる重大な問題。

これまで、沖縄県全体としては人口増加基調の中、離島過疎地域は‘自然増を上回る社会減’という状況。

今後は‘自然減の中のさらなる社会減’という新しい局面、より厳しい状況も考えなければならない可能性がある。

離島の定住条件整備

これから求められる定住条件の整備は果たして50年前と同様か?

情報通信、医療福祉をはじめ、インフラもサービスも高度化。

「高度化への対応」と、「コミュニティの維持」「持続可能な地域社会」とを併せて考える必要がある。

新計画(素案)の重要事項

第6章「県土のグランドデザイン」の柱の一つに、「小・中規模離島や過疎地域等における持続可能な地域づくり」が明確に打ち出されたことは重要。

但し、具体化する施策がない限り単なるお題目で終わる。こうした点も踏まえた建設的な審議が必要。

「量から質へ」の視点

離島の持続的な観光振興に結びつく指標は、「入域観光客数」以外に何があるか。

「1人当たりの消費額」も記載されているが、正確に算出できているのかという問題もある。

担い手となる「人材」に関わる指標を検討できないか。

観光の場合、地元で観光に関わる商品をつくる資格や能力のある人材を、目標値を定めて育成していくといった考え方もあるのではないか。

また、市町村あるいは島単位で、地元の観光収入や収益に関わる指標も検討してみるべきではないか。

「離島特定」の枠組み

離島において達成すべき目標が沖縄県全体の中で埋没してはいけない。

離島に特定した枠組みの中、適切な目標値を明確にするべきではないか。

また、圏域別展開の中で小・中規模離島が埋没してしまってはいけない。

八重山の場合、石垣島とそれ以外の島々の関係がある。

広域で対処していくべきこと、他方、それぞれの島の条件と実状を踏まえて目標値を定め、定住条件の底上げを図るべきことの双方が考えられる。

より丁寧な整理ときめ細かな施策が必要。

「離島ならでは」の視点

例えば「幸福度」には、コミュニティ、自然環境、精神的な拠りどころといった重要なファクターがあると伺った。

そうした観点から、離島ならではの幸福度について考え、何らかの目標や指標を考えることはできないだろうか。


島の観光や医療 量から質へ転換 県の離島振興部会

7/31沖縄タイムス)

新しい沖縄振興計画の策定にあたって重要な一翼を担う「離島過疎地域振興部会」の審議がより有益なものとなるように、微力ながら建設的・創造的な議論に貢献したいと思っています。