2021年11月12日金曜日

令和3年度「離島過疎地域振興部会」(第5回)開催

 20211112日、第5回「離島過疎地域振興部会」が開かれました。

令和元年の部会発足から2年にわたる審議の最終会合となる今回は、これまでの審議結果の総括と合わせて議論が交わされました。

また、2022年度以降10年を計画期間とする新たな振興計画全体の「計画展望値」の一つ、「離島人口」についても非公開審議を行いました。

以下、上妻の発言要旨(抜粋)を記します。

今後の離島振興に関する補足意見

37の県内有人離島、とりわけ小規模離島のニーズや課題を重視すべき。「離島市町村」や「圏域」といった十把一絡げの扱いで、例えば、小さな島の医療に関わる切実なニーズがなおざりにされるようなことがあってはならない。

事務局から報告された「グルーピングによる新しい離島振興策」は重要な試み。島の規模の相違はもちろん、交通条件、地域資源、島で提供可能なサービス、拠点病院との距離など様々な要素を整理すると、島々の条件や課題に共通性も見出せるはず。

但し、こうしたグルーピングは、グループ毎のパターンやグループ別の施策展開などに繋げるものではないはず。島単位で地域のニーズと課題を把握し、よりきめ細かく対応していくことが基本。



新たな振興計画における「離島人口」の設定(計画展望値)について

「計画展望値」なる沖縄県の指標は、「努力目標」の意味合いも備えている。人口動態のトレンドに即した「推計値」とは異なる。設定すべき「離島人口」は、少なくとも‘現状維持’以上であるべき。その上で、離島人口に関する厳しい将来推計も踏まえ、実効性のある取組に全力をあげるべき。

国立社会保障・人口問題研究所による推計(平成30年「日本の地域別将来推計人口」)では、2030年には県内全ての離島市町村で2015年の人口を下回り、さらに2045年には、7つの離島町村で2015年の70%を下回る人口減が予想されている。

一方、「沖縄県人口増加計画」20142021年度)では、①「自然増の拡大」、②「社会増の拡大」とともに、③「離島・過疎地域の振興」が取組の柱に掲げられている。この間、離島・過疎地域に関わる人口増加計画に基づき、いかなる施策が講じられ、どれだけの成果を上げたのか。

また、拠点離島(宮古島、石垣島)と中小零細規模の離島では、施策のニーズも実施すべき内容も異なる。当該計画においてこの点はどれほど意識されたのか。

県あるいは社会保障・人口問題研究所による離島人口の「推計値」。他方、現状維持または微増を前提とする離島人口の「目標値」。この両者のギャップを埋める施策は、離島振興を‘沖縄振興の1丁目1番地’と標榜する沖縄県が政策・資源を総動員して取り組むべき。

社会増に向けた移住(Ⅰターン)促進に関しては、県外の離島や過疎地域が実践している地元行政主導の新事業創出(例:島根県海士町)を含め、‘島に仕事を創る’取組が重要。沖縄県は本腰を入れて支援すべき。


復帰半世紀という歴史的な節目を迎える中、<離島・過疎地域>という視点/立ち位置から、これからの沖縄振興のあり方を考え、審議を重ねる貴重な機会に参加できました。

長期間にわたる当部会の審議にあたっては、たくさんの方々に大変お世話になりました。深く御礼申し上げます。

とりわけ、部会長として一方ならぬご指導と貴重なご教示、各般のご高配をいただいた嘉数啓先生に衷心から感謝の意を表します。


2021年9月13日月曜日

令和3年度「離島過疎地域振興部会」(第4回)開催

2021913日、第4回「離島過疎地域振興部会」が開かれました。

新たな振興計画(素案)の審議として実質最後の機会となる今回は、「新たに生じた課題への対応」を主要テーマに論議が行われました。

以下、上妻発言要旨を記します。

Ⅰ.離島・過疎地域の振興に関わる「新たに生じた課題」

20203月『総点検報告書』(関連事項抜粋)

離島を支える人材の確保・育成

▽産業に携わる担い手不足が深刻

離島を支える多様な人材の確保

▽人材の柔軟かつ流動的な活用を支える制度づくり ▽県外からのUIターン促進、ワーケーションなど多様な働き方への対応

人口減少対策と地域の存続

▽小規模離島や過疎地域の小中学校の維持・存続など

離島・過疎地域における関係人口の拡大

▽定住、交流だけではない「関係人口」の創出 ▽離島留学など具体的取組の推進

その他

▽農業等の新規参入者が定住できる住居がない ▽沖縄の離島では空き家が活用されていない

私見(上妻)

地域・コミュニティの存続、人材の確保・育成、UIターン促進、関係人口創出、移住・定住を支える住宅整備などについて、個別の施策実施にとどまらず、相互の関連性を踏まえた取組(施策連携)を強化すべき。

 

Ⅱ.施策共通の基軸:「持続可能な地域づくり」

20203月『総点検報告書』(関連事項抜粋)

過疎・辺地地域の振興

▽社会的サービスや集落機能の維持 ▽UJIターンの環境整備、関係人口の創出等

20203月『新沖縄発展戦略』(関連事項抜粋)

離島・過疎地域における社会減対策の強化

▽従来の定住条件の整備にとどまらない持続可能な地域づくり ▽地域の活力確保、緩やかな人口減少への対応、豊かさを失わない「適疎」の視点

持続可能な地域づくり

▽社会サービスとコミュニティの維持・存続 ▽地域を支える多様な関係人口との発展的連携

UJIターンの促進と離島力の発揮

▽UJIターンと新たな人材の確保(専門人材を含む) ▽子育て支援体制や教育環境の充実

参考「特定地域づくり事業協同組合制度」について

人口減少地域の農林水産業や商工業の担い手の確保を目的に、地元が出資・設立する人材派遣組合を支援。

季節毎の需要に応じて複数の仕事に従事する移住者などに年400万円程度の給与を保証。(国と市町村が半額負担)

人手を必要としながら雇用には踏み切れない実情等を考慮し、働く場の確保、移住・定住の促進を図る。

 

Ⅲ.「離島を核とする交流の活性化と関係人口の創出」(基本施策4-⑷)

関係人口について

 

様々な形で地域や住民と継続して関わる多様な主体

郷里出身者、地域にルーツがある者(郷友会、その他)

一時的転入者、地域外からの通勤・通学者、ボランティア

縁故者(過去の勤務・居住・滞在など何らかの関わりがある者)

ふるさと納税者、旅行者・観光客(リピーター)、その他

新たな動向

(1)準島民制度

複数の国境離島自治体で導入され、航路運賃割引等の対象となっている。

(例島外在住の生徒・学生、離島留学生の家族・保護者、体験移住・居住・就業等を目的とする来島者、反復・継続して研修等を行う者

(2)ふるさと住民制度

徳島県佐那河内村ゆかりのある村外の人を登録。ふるさと住民票の交付、地域おこし支援員としての村づくりへの参加など。

(3)その他

リモートワーカー、オンラインで繋がる新しい関係者・縁故者など

関係人口の特質

多種多様な関係人口は数値化が困難。「増やす」よりも「深さ」「強さ」が重要。

「行ったこと/買ったこと/住んだことがある」を超える関係づくりが要件。

新たな振興計画(素案)における「関係人口」の位置づけ(関連事項抜粋)

離島を核とする関係人口の創出と移住促進(素案P157

▽働きながら離島地域での滞在を満喫できる環境整備 ▽ワーケーション来訪者や地域振興に関心のある企業と接する機会を設けるなど関係人口との連携による新しい地域づくり

Ⅳ.所 見

素案について

「新たに生じた課題」に位置づけられた重要事項にもかかわらず、<離島を核とする関係人口の創出>に係る施策は貧弱かつ不十分ではないか。

関係人口の多様性や状況把握の難しさなどから、何をすればよいかが明確ではない状況も推察。沖縄県として以下の取組を打ち出すべき。

(1)関係人口の創出・拡大と新しい地域づくりに関する調査・研究等の推進

(2)関係人口との連携による活性化や地域づくりを目指す市町村の取組支援

関係人口創出と新しい地域づくりへの取組(案)

島に関心を持つ人材と地域を結ぶマッチング事業

快適なリモートワークを支える環境整備(滞在、就労、生活、居住等)

新たな関係人口創出を視野に入れたレスポンシブルツーリズム等の推進

島の魅力や価値を旅行者や観光客が共有するレスポンシブルツーリズムは関係人口創出を導く新たな手立て。ユニバーサルツーリズムを通じた観光困難者(障害者、高齢者、療養者等)と家族等を対象とする新しい関係構築も考えられる。

移住・定住、多様な滞在・居住への対応 (多様なニーズに応える住宅整備)

公営住宅の入居要件を充たさないUIターン者等に適応する住宅整備

ワーケーションを含む多様な滞在・居住のニーズを踏まえた住居等の提供

島根県海士町では、家主から10年間空き家を借り受け、町が家屋改修や固定資産税の負担等を行う取組を実施。

関連施策に関わる意見

地域コミュニティの活動支援(素案P6869

持続可能な地域づくりを担う人材の育成・確保(素案P171

地域産業を担う人づくり(素案P174175

持続可能な地域づくりを支える取組として、個別の施策実施にとどまらず、地域の実状を踏まえた実効的推進、施策間の連携、適切な政策評価を求める。

<地域コミュニティの活動主体><地域づくりの担い手となる人材>に関しては、離島や過疎地域の実態に適う施策と成果指標の設定が必要。

<地域産業を担う人材>に関しては、前掲「特定地域づくり事業協同組合制度」の活用を含め、地域の切実なニーズに応える取組を求める。

総括

今後の離島・過疎地域では‘自然減の中の社会減’への移行、‘限界離島’の発生等も懸念される。

持続可能な地域づくりを軸に市町村との連携を強化し、関係人口の創出・拡大を含む新しいアプローチを多角的に推進すること。

2021年9月1日水曜日

令和3年度「離島過疎地域振興部会」(第3回)開催

202191日、第3回「離島過疎地域振興部会」が開かれました。

会議後半は「農林水産業振興部会」との合同会議として開催され、「離島ごとの環境・特性を生かした農林水産業の振興」等をテーマに論議が交わされました。

以下、上妻発言要旨

離島ごとの環境・特性を生かした農林水産業の振興(産業振興)

 

Ⅰ.就業者減少の中の「持続可能な離島モデル」

 

離島過疎地域生産地としての大きな役割

離島過疎地域の人口

(ア)県内15の離島市町村沖縄県全人口の8.6%ほど

(イ)離島市町村に北部4町村を加えた離島過疎地域全人口の約10

一方、(ア)(イ)の農林水産生産量が沖縄県全体に占める割合は格段に大きい。

新しい振興計画の中で‘離島過疎地域が生産地として果たしている大きな役割’が明確に読み取れるよう配慮願いたい。

農林水産業持続可能な雇用としての重要性

産業が限られる離島過疎地域にとって農林水産業は非常に重要。

一次産業が基幹産業の島 (例)黒島、多良間島

就業者の67割を一次産業が占める島もある (例)津堅島、来間島

人口減少の観点からも‘持続可能な産業かつ雇用’としての農林水産業の重要性は極めて大きい。

就業者数の減少

危惧されるのは就業者数の減少。

県内37有人離島の産業別就業者の増減国勢調査ベース

農業従事者20109,763人→20158,6841,079

相当規模の減少であることは間違いない。

2015年→2020年はどうだったか? 

離島農業の担い手問題

「総点検報告書」(20203月)に挙げられた対策

○農林水産業、食品加工業等を支える担い手の育成や技術支援

○新規就農者の長期的な育成・確保青年、女性、農外など幅広い層への研修の充実等

○雇用就農の促進および受け皿の農業法人の育成、就農希望者とのマッチング等

新計画における政策は?

20102015年の農業従事者の減少

沖縄全体2,004人(25,98123,977)=7.7%減

離島地域1,079人(9,7638,684)=11%減

離島の就業者減少はより顕著。‘それは致し方ない’ということか?

<離島ごとの環境・特性を生かした農林水産業の振興>(素案P131132を読む限り、就業者減少への対応策は見えない。

<農林水産業を支える多様な担い手の育成・確保>(素案P175、<担い手の経営力強化>(素案P120121で離島地域もカバーするということか?

持続可能な離島モデルを

沖縄の農林水産の基盤である離島過疎地域で、県全体に先駆けて‘担い手の減少’が進行中。

その一方で「生産量」「生産高」の拡大を見込めるのか?

‘今後、状況は深刻化していく’という想定の中で「持続可能なモデル」を創れるか。離島過疎地域の切実な状況を踏まえた政策、具体策の検討を願う。

 

以下、追加意見

Ⅱ.離島過疎地域の農水振興戦略付加価値創出、流通対策、地産地消

 

「離島農林水産物の生産振興とブランド化の推進」について

素案記載の骨子

○各離島の特色を生かした園芸作物のブランド化

→定時・定量・定品質の出荷が可能な拠点産地の形成など

○流通条件の不利性解消

→流通施設の整備、輸送コストの低減など

○域内経済循環の拡大

→農商工連携による付加価値の創出、生産品のブランド化など

これらは、県全体の農水振興関連施策と合わせて展開すべき。

関連施策<多様なニーズに対応するフードバリューチェーンの強化>(素案P118

○食品産業など他産業との連携による農林水産物の付加価値向上

○農林水産物の輸送コストの低減対策、総合的な流通の合理化

○地産地消等による県産農林水産物の消費拡大

<健康機能性のエビデンスに基づくブランディング>(素案P119

離島過疎地域の園芸作物(島野菜、薬草など)の生産・技術支援とより強く結びつけるべき。

→健康・長寿に関わるエビデンス(例:抗酸化物質、ミネラル)とともに付加価値を創出、さらにブランド化を目指す。

<輸送コストの低減対策、総合的な流通の合理化>(素案P119

○生産地から消費地までのコールドチェーン体制の確立、船舶輸送を基本とするモーダルシフトへの移行促進

○成果指標「県外出荷量のうち船舶輸送での出荷量の割合」

離島の流通条件の不利性解消につながる話なのか?

「生産地から消費地までのコールドチェーン体制」 に小・中規模の離島は入っているのか?

「船舶輸送での出荷量の割合」が輸送コスト低減と流通合理化の指標となるのか?

離島の流通条件の不利性解消の具体策はあるのか?

ex.流通施設の整備、輸送コストの低減施策、成果指標など

<地産地消による消費拡大>(素案P119120

地産地消離島過疎地域の経済循環、強いコミュニティ経済の実現に不可欠。

ホテル・飲食店等との連携強化については、施設や店舗のない離島過疎地域の生産者を含め、契約栽培の促進・支援を強化してもらいたい。

食育、特に給食を通じた地産地消の拡大は離島過疎地域の生産者も巻き込んだ展開に期待。

資源とアイディアを総動員し、「島内」「域内」「県内」など 異なるスケールエリアに則した多元的な地産地消を推進されたい。

2021年8月19日木曜日

令和3年度「離島過疎地域振興部会」(第2回)開催

 2021817日、第2回「離島過疎地域振興部会」が開かれました。

会議では「離島における安全・安心の確保と魅力ある生活環境の創出」を中心に審議が行われました。


以下、上妻の発言要旨を記します。

離島における安全・安心の確保と魅力ある生活環境の創出(定住条件整備)

 

沖縄全域の地下水の保全と利用

水質調査だけ、あるいは特定の圏域(宮古圏)だけの対策で充分か?

地下水について、もっと踏み込んで沖縄県の方針を明確にすべき。

水循環基本法

20216月、水循環の中に‘地下水の保全と利用’を明記した改正「水循環基本法」が成立。自治体の条例制定も主眼に‘地下水マネジメント’が国と地方公共団体の責務として明確化された。

河川のない多数の島々を含め、地下水の適正な保全・利用は沖縄県の重要政策課題。

有害物質PFOS

有機フッ素化合物PFAS(PFOS、PFOAの合計値)による深刻な環境汚染が進行している。

20211月に県が公表した米軍基地周辺のPFAS汚染に関する水質調査結果では、嘉手納基地周辺の地下水で環境省暫定指針の60倍(3,000ナノグラム)、宜野湾市の湧き水で40倍(2,000ナノグラム、過去最高値)を検出。他方、2月には航空自衛隊那覇基地からのPFOSを含む泡消化剤の流出も発生。

使用も製造も禁止された‘永遠の化学物質’から地下水を守る。離島を含む沖縄全域の課題ではないか。今後を見据えた方針と施策を明確にすべき。

離島を含む廃棄物の広域処理

素案記載の「一般廃棄物と産廃のあわせ処理」「施設整備に係る市町村負担軽減」「広域化の促進」「輸送費の低減」「海岸漂着物対策」は妥当。

より考慮されるべき離島の現実は、①処理能力の限界、②高コスト構造、③環境負荷への脆弱性。

処理能力の限界と環境汚染の現実

素案では「高コスト構造」改善への取組(施設整備、輸送費等)は読み取れる。

しかし、離島とりわけ小・中規模離島の「処理能力の限界」は深刻な問題。ここにフォーカスした施策が求められるのではないか。

持続不可能な最終処分場問題、島の処理能力の限界に伴う環境汚染は現実に進行している。沖縄県としての認識と見解を伺う。

離島を含む広域処理と海上輸送体制

「複数市町村による広域処理の促進」は離島のゴミ問題解決への一つの解(具体策)と理解。

離島を含む広域処理の推進には海上輸送が不可欠。島嶼県の政策課題と考える。

離島を含む廃棄物の広域処理にあたって沖縄県が担う役割、また、海上輸送体制の充実について見解を伺う。

スマートアイランド新たなモビリティの導入など

「空港・港湾等の交通拠点を連結する道路整備を推進し、島内移動手段の連携接続に取り組む」旨、シームレスな島嶼型交通体系構築の一環として理解。

一方、「離島の条件不利性克服」に向けては、‘先端技術を活用した不利性の解消’、また、島嶼型モビリティの導入を含む‘スマートアイランド実現’への取組も記載されている。

モビリティ ✕ スマートアイランド

県外離島ではグリーンスローモビリティ(時速20km未満で公道を走る電動・低速の公共交通)や低コストの自動運転システムを導入する社会実験も実施されている。

「島内移動手段のシームレスな連携接続」への施策は、道路整備、バス路線の確保・維持だけではないのではないか?

MaaS

自家用車以外の交通手段を繋ぐMaaSMobility as a Service)は、シームレスな島嶼交通システム構築の一環として離島でこそ積極的に推進すべき。

離島地域への新技術の先行導入

今般、ドローン物流の実用化、空飛ぶクルマ(eVTOL)の本格導入への準備等も進展中。

離島の定住条件整備と条件不利性の克服にあたっては、新技術の積極活用と離島地域への先行導入が望まれる。計画への明確な位置づけを求める。


離島過疎地域の振興に係る成果指標等

 

離島観光

施策展開「持続可能で高品位な離島観光の振興」

施策「着地型観光プログラム等の定着」

成果指標「離島地域への入域観光客数及び一人当たり観光消費額」

‘量を追う観光から質を重視する観光へ’の転換を含め、離島観光の担い手/人材の育成を主眼とする指標を設定できないか。

関連施策「多彩で質の高いサービスを提供できる観光人材の育成・確保」の成果指標が「観光客の沖縄旅行に対する満足度」となっているが、いかがなものか。

*「観光人材の育成・確保」の達成状況を「観光客の満足度」で確認するのか?

人材の育成に関しては、研修や資格取得などの具体策もあり、総点検では「観光人材育成研修受講者数」が挙げられていた。

離島関係の受講者数、離島での研修開催件数、また、第3種旅行業の資格取得件数等を指標とすることも考えられる。

高品位な離島観光の振興と人材の育成について適切な指標を設定いただきたい。

テレワーク

施策展開「離島を核とする関係人口の創出と移住促進」

施策「離島におけるテレワーク、ワーケーション等の推進」

成果指標「国内客の離島宿泊客数」

指標を「テレワーク・ワーケーション推進施設の利用者数」に変更予定とのこと、適切な対応と考える。

克服すべき沖縄の固有課題「離島の条件不利性克服と持続可能な島嶼地域の形成」においても、‘離島におけるテレワークやワーケーションの促進’が明記されている。

テレワークに関しては、離島住民のテレワーク推進(環境整備、人材育成)がより重要ではないか。

雇用創造型のテレワーク人材育成ということでは、「離島ICT利活用促進事業(離島テレワーク人材育成補助事業)」が実施されている。

離島の新しい雇用創出を主眼とするテレワーク人材育成の指標を検討されたい。

離島過疎地域の人口

計画展望値(社会)「離島人口」

「離島人口」に加えて、以下の計画展望値を設定してはどうか。

(1)小・中規模離島の人口

37の有人離島から「宮古島」「石垣島」を除いた35島の人口

15の離島市町村から「宮古島市」「石垣市」を除いた13町村の人口

(2)離島過疎地域の人口

離島市町村と北部過疎地域4町村の19市町村

離島と北部過疎の19市町村から「宮古島市」「石垣市」を除いた17町村の人口


2021年8月5日木曜日

令和3年度「離島過疎地域振興部会」(第1回部会)開催

2021730日、沖縄県振興審議会「離島過疎地域振興部会」が開かれました。

委員は11名。部会長は嘉数啓琉球大学名誉教授。NPW代表理事・上妻は副部会長として参画しています。

201911月以来となる本会議では、本土復帰50年の節目の年から始まる「新たな振興計画(素案)」を中心に、今後の調査審議の内容などについて、報告、意見交換が行われました。

沖縄、東京ともに「緊急事態宣言」発出中のコロナ禍の状況下、上妻はオンラインでの会議参加となりました。

以下、上妻発言要旨

半世紀の時間軸の中で

復帰半世紀の節目に策定する新しい振興計画ということで、県内離島人口の推移を‘50年の時間軸’で振り返る。

1960年から2010年までの推移で、

・石垣市を除く全ての離島市町村の人口が減少

・離島市町村全体では24%の減少

・9つの町村で50%を超える人口減

といった現実がある。

1972年の復帰から50年となる2022年以降をどう考えるか。当部会の審議に関わる重大な問題。

これまで、沖縄県全体としては人口増加基調の中、離島過疎地域は‘自然増を上回る社会減’という状況。

今後は‘自然減の中のさらなる社会減’という新しい局面、より厳しい状況も考えなければならない可能性がある。

離島の定住条件整備

これから求められる定住条件の整備は果たして50年前と同様か?

情報通信、医療福祉をはじめ、インフラもサービスも高度化。

「高度化への対応」と、「コミュニティの維持」「持続可能な地域社会」とを併せて考える必要がある。

新計画(素案)の重要事項

第6章「県土のグランドデザイン」の柱の一つに、「小・中規模離島や過疎地域等における持続可能な地域づくり」が明確に打ち出されたことは重要。

但し、具体化する施策がない限り単なるお題目で終わる。こうした点も踏まえた建設的な審議が必要。

「量から質へ」の視点

離島の持続的な観光振興に結びつく指標は、「入域観光客数」以外に何があるか。

「1人当たりの消費額」も記載されているが、正確に算出できているのかという問題もある。

担い手となる「人材」に関わる指標を検討できないか。

観光の場合、地元で観光に関わる商品をつくる資格や能力のある人材を、目標値を定めて育成していくといった考え方もあるのではないか。

また、市町村あるいは島単位で、地元の観光収入や収益に関わる指標も検討してみるべきではないか。

「離島特定」の枠組み

離島において達成すべき目標が沖縄県全体の中で埋没してはいけない。

離島に特定した枠組みの中、適切な目標値を明確にするべきではないか。

また、圏域別展開の中で小・中規模離島が埋没してしまってはいけない。

八重山の場合、石垣島とそれ以外の島々の関係がある。

広域で対処していくべきこと、他方、それぞれの島の条件と実状を踏まえて目標値を定め、定住条件の底上げを図るべきことの双方が考えられる。

より丁寧な整理ときめ細かな施策が必要。

「離島ならでは」の視点

例えば「幸福度」には、コミュニティ、自然環境、精神的な拠りどころといった重要なファクターがあると伺った。

そうした観点から、離島ならではの幸福度について考え、何らかの目標や指標を考えることはできないだろうか。


島の観光や医療 量から質へ転換 県の離島振興部会

7/31沖縄タイムス)

新しい沖縄振興計画の策定にあたって重要な一翼を担う「離島過疎地域振興部会」の審議がより有益なものとなるように、微力ながら建設的・創造的な議論に貢献したいと思っています。

2021年7月12日月曜日

NPW広報/沖縄県国際都市形成構想を知る「上妻毅オーラルヒストリー 第2回」(季刊誌「しまたてぃ」)

 

季刊誌「しまたてぃ」(一般社団法人沖縄しまたて協会)の20217月号(No.97)が発行されました。



前号に続く2回目のインタビューは、2021414日、聞き手の江上能義先生(琉球大学・早稲田大学名誉教授)、編集者の砂川敏彦さん(沖縄しまたて協会)とともに都内で実施しました。

ほぼ三十年の関わりとなった「沖縄」について、かつて全力で取り組んだ90年代の仕事を振り返り、同時に、自分自身のキャリアも総決算するような、大変得難い機会となりました。


来年5月には「沖縄復帰」から半世紀の節目を迎えます。

歴史的局面にある沖縄に関連し、専門誌「しまたてぃ」の意義深い企画に関わらせていただけたことを心から感謝しています。


2021年4月29日木曜日

NPW広報/沖縄県国際都市形成構想を知る「上妻毅オーラルヒストリー 第1回」(季刊誌「しまたてぃ」)

 

一般社団法人沖縄しまたて協会が編集・発行している建設情報誌「しまたてぃ」の20214月号(No.96)に以下が掲載されました。

上妻毅オーラルヒストリー 第1回



同誌では、1990年代の沖縄県「国際都市形成構想」の検証を中心に、構想の立案や推進に関わった関係者へのロングインタビューを行っています。

これまで、元県職員の坂口一氏、元副知事の吉元政矩氏のオーラルヒストリーが各2回掲載され、お二人に続いて、当時、財団法人都市経済研究所特別主任研究員だった上妻毅へのインタビューが行われました。

聞き手は、政治学者の江上能義氏(琉球大学/早稲田大学名誉教授)。

江上先生は、国土事務次官等を歴任した故下河辺淳氏のオーラルヒストリーをはじめ、数多くの関係者へのインタビューを編纂した『沖縄開発庁および沖縄振興開発政策オーラルヒストリー』など、復帰後の沖縄振興の実態と全体像を最も理解している沖縄政治研究のオーソリティです。

インタビューは昨年1125日、沖縄しまたて協会の編集責任者砂川敏彦氏が同席し、都内で行われました。


有意義な企画に協力できたことを大変有り難く思っています。


一般社団法人沖縄しまたて協会ホームページ