2019年12月28日土曜日

報告/イタリア・オランダ出張記者会見(新沖縄発展戦略検討会議)


20191115日~22日、富川盛武沖縄県副知事ら12名による以下の海外出張調査が行われました。


【概要】

新たな沖縄振興計画に関わる重要事項を検討する見地から、オーバーツーリズム対策の先進地であるイタリアのサルディーニャ、欧州の最先端物流拠点であるオランダのロッテルダム等を対象とする現地調査を実施。


【主な日程】

111719日:サルディーニャ州(イタリア)
・訪問先:カリアリ市、サルディーニャ州政府、カリアリ大学、ヴィッラシミウス市
111920日:アムステルダム市、ロッテルダム市(オランダ)
・訪問先:JETROアムステルダム事務所、アールスメール花市場、VRR社(物流関連企業)、ロッテルダム港湾公社、日本通運(ロッテルダム事務所)等


上妻は「新沖縄発展戦略検討会議」の委員として本調査に参加しました。
また、帰国後の1220日には、沖縄県庁にて記者会見が行われ、副知事ら調査チームによる出張報告が行われました。

以下、同記者会見での上妻コメント(メモ)を記します。


イタリアはサルディーニャ州政府と2つの自治体(カリアリ市、ヴィッラシミウス市)について、オランダはロッテルダム港湾公社について、それぞれ興味深かったこと、印象に残ったことを報告申し上げたい。 

サルディーニャ州政府

サルディーニャの特徴:
‘期間限定のオーバーツーリズム’
・サルディーニャ州全体の観光客:年間1500万人
・但し、5月~8月の四ヶ月に集中。観光客の8割の目的は海(特にビーチ)。
サルディーニャ島の規模
・面積:四国より大きく九州より小さい(約24,090㎢)
・人口は約160万人。島をめぐる海岸線全土に200近くのビーチ。
沖縄が今後直面する(あるいはすでに直面している)オーバーツーリズムと共通する面、様相を異にする面がある。

州政府ではオフシーズン対策の話が先行。
‘ビーチオンリーの観光地からの脱却’という方向性。
・内陸部の観光資源、「食」や「ワイン」、「遺跡」「祭り」などの歴史・文化、自転車・その他スポーツの「体験型ツーリズム」を積極的にプロモート。
・内陸部へのアクセス、移動環境の充実も課題。
かつての主力産業は化学産業。しかし、ルーマニア等の安い労働力を求め製造業が空洞化。
現在のサルディーニャを支える主力産業は観光。
それでも年間3000人の若者が流出(大学卒業後、島外へ)
州地域担当相(大臣)コメント
「雇用、ビジネスなど‘チャンスのある島への脱皮’が不可欠」


カリアリ市

明快な観光ポリシー
・観光客を増やしたい
・収益を向上させる
・通年観光をめざす
・人の移動を調節するプログラムを築く
オーバーツーリズムに伴う問題(渋滞、混雑、ゴミ、騒音など)と対策
・短期滞在(2~3泊)のつまみ食い的観光を改善
・人数制限を含むビーチの保全と持続的利用を検討

ヴィッラシミウス市

町村規模の小さな自治体(コミューネ)だが、学ぶべき点は大きかった。
基本ポリシー:
‘海を守る’+‘持続可能な観光’
・海洋保護区域の指定:ゾーンを定め、禁止する活動(水泳、スキューバ、素潜り漁等)も規定
・水不足への対応、ゴミ問題(分別・リサイクル、コンポスト)、照明(LED化)、ハイブリッド車 ..etc.
もっとも参考になったこと:ゾーニングによる建築規制
・海岸線から500m以内 ホテル等建設禁止
・海岸線から2km以内 住宅等建設禁止
・州法による保護指定地域の中、市がより具体的な規制を実施。

ひるがえって、「沖縄の海岸線」は大丈夫か?
県内の海岸と周辺は相当規模の土地の所有権が県外にわたっている状況も。今後、開発圧力はさらに増大する。
乱開発の規制、自然環境、景観、住民の生活環境を守るための手立て、条例を含む制度面の保全措置は不十分。
サルディーニャ州とヴィッラシミウス市の事例に学ぶべきことは大きい。


ロッテルダム港湾公社

主な質問:①港湾の経営主体について、②CO2削減の取組み
港湾経営の転換
・2004年、ロッテルダム市から港湾公社(ポートオーソリティ)に移行(株式会社化)
・現在もロッテルダム市は、オーナー(土地所有者)かつ株主
民間の人材とノウハウが導入される中、間違いなく「機動力」は向上した印象。
・ロッテルダム港の成長・発展と雇用を念頭に「ビジョン」「目標」「マスタープラン」「シナリオ」を構築
・新事業への投資、新たな企業立地の促進、新規分野への進出等を推進
CO2削減の背景
・工業港湾地域としての責任(過去:大気汚染・水質汚染の発生源としての実態)
・オランダの地理的特性(国土の4分の1が海抜ゼロメートル以下)
・EUの枠組みと気候変動への取組み(特にCO2削減)
CO2削減への取組みは港湾経営の効率化や高度化につながったか?
・詳細不明。しかし、廃棄物を化学原料に転換する新事業には市も民間も投資..etc.
最新の取組み:「港湾経営最適化ソフト」によるデジタルソリューション
・港湾活動・コミュニティ(待ち時間を20%減)
・物流チェーン(ピザでもできるトレースを大型貨物で)

ひるがえって沖縄の状況は?
港湾経営もオペレーションも最適・最善には至っていない。
規模・条件は違えど学ぶべき点は大きい。

持続可能な観光 重要 副知事が欧州視察報告
12/22沖縄タイムス)

“持続可能な観光”欧州の事例を報告
12/24 RBCニュース)
https://www.rbc.co.jp/news_rbc/%e6%8c%81%e7%b6%9a%e5%8f%af%e8%83%bd%e3%81%aa%e8%a6%b3%e5%85%89%e6%ac%a7%e5%b7%9e%e3%81%ae%e4%ba%8b%e4%be%8b%e3%82%92%e5%a0%b1%e5%91%8a/

報告/「沖縄県振興審議会」開催

20191226日、第69回「沖縄県振興審議会」(会長:西田睦琉球大学学長)が開催されました。
審議会委員、専門委員、沖縄県部局長ら60数名同席の中、「沖縄21世紀ビジョン基本計画等総点検報告書」に対する答申案などについて公開審議が行われました。


会議では、まず7月以降半年にわたる審議を重ねてきた9つの部会長から報告と意見陳述が行われました。
NPW代表理事・上妻は、海外出張中の嘉数啓離島過疎地域振興部会長(琉球大学名誉教授)に代わり、当部会の審議に関わる重要事項を中心に意見を述べました。
以下、上妻の発言(全文)を記します。


はじめに

副部会長の上妻でございます。よろしくお願いいたします。
当部会は、「ほぼすべての意見・論議が他の部会のテーマに関わる」というところ、例えば「医療・福祉」「観光」「人材育成」など、分野を横断した審議の特徴がございます。
お伝えしたいことはたくさんございますが、幾つかの重要事項についてお話しさせていただきます。

人材の確保

一点目は、多くの島々と過疎地域が直面している‘人口減少の中の人材の確保’という問題です。
特に、医師・保健師など医療に関わる人材の確保は、常に切実な問題です。
一方、航路を支える船員、空港職員の確保なども問題となりつつあります。
「離島住民の命と暮らしを支える担い手の確保」-今後、より切迫した問題になると思います。

在宅介護・医療

離島での「介護」「医療」の問題がございます。
例えば、竹富町のアンケートでは、お年寄りの約7割が、「生まれ育った島で最期を迎えたい」と答え、ほとんどの方が「在宅での介護・医療の充実」を求めています。
しかし、「島に常駐してくれる医師を一人確保するのも大変」という現実があります。
入院のために島を離れるとき、「ご近所や友人が次々にお別れの挨拶に来る」という切ない話を聞いたこともあります。
離島の「在宅介護」「在宅医療」、そして「終末医療」をどう充実できるか。
切実な問題です。

人口減少

次に、「人口」に関してです。
県内の有人離島は現在37島ですが、50年から60年の期間でみると、石垣島を除くすべての島で人口は減少しています。
住民が‘復帰前の3分の1以下’になった島もあります。
申し上げたいのは、多くの島々で、「自然増を上回る社会減が進行している」ということです。
多良間島のケースを申しますと、
・20年前、多良間島の出生率は「3.14」-全国で断トツの1位でした。
・その後も「平均を上回る出生率」を保っています。
・しかし、「3.14」の時期を含め、人口は減少しています。

「定住条件の整備」が向き合うべきこと

このような状況の中、申し上げた「人材確保」の問題があり、「小中学校存続」の問題があり、「地域社会そのものの維持・存続」という課題が浮かび上がっています。
県の施策である「定住条件の整備」は、
‘恒常的な人口減少’
‘自然増を上回る社会減’
‘地域社会の存続’
‘担い手の確保’
こうした現実と向き合うべきで、悠長な話ではありません。

‘持続可能な離島観光’に関して

「観光」についても若干触れたいと思います。
「オーバーツーリズム」が論点となりました。
総点検では、「入域客数」が観光振興の主たる指標です。
離島の観光も、「観光客数の増加」が評価の指標、目標となっています。
しかし、例えば竹富島の場合、住民 350人ほどの島に、年間50万人を超える観光客が訪れています。
観光客の増大によって‘島の自然・文化・生活環境が悪化すること’を島の皆さんは望んでいません。‘これ以上の観光客増’も望んでいないように感じます。
沖縄県として「質を重視した観光振興」を進めていく旨は伺っています。
しかし、それぞれの島について、
・どれだけの観光客が来て、
・滞在日数あるいは滞在時間はどれぐらいで、
・いくらぐらいお金を使っているか?
こうしたデータは未整備と聞きました。
異なる条件や事情に則した「島単位の観光戦略」が重要と考えます。
基礎的なデータは整える必要があると思います。
また、「オーバーツーリズム」については、<観光管理>という概念が重要と考えます。
部会では、
・<量の拡大>を基調とする従来の指標・目標を見直すこと
・<観光管理>という観点で、‘良質で、持続可能な観光’を推進すること
そうした必要性をお話しさせていただきました。

むすび

最後に申し上げます。
「離島・過疎地域」を特殊な地域として捉えず、沖縄の問題・課題の縮図、あるいは、沖縄全体の将来を占う地域として、実情を見つめていただきたいと存じます。
特に‘人口減が続く離島の現実’から考えるべきことは大きいと思います。
これまでの振興策の検証を含め、‘離島・過疎地への施策・事業の総動員’を願っております。
以上です。
振興計画点検を承認  審議会、県に来月答申
12/27沖縄タイムス)

「幅広い分野で議論を」 沖振計への提言を来月答申
12/26 RBCニュース)
https://www.rbc.co.jp/news_rbc/%e3%80%8c%e5%b9%85%e5%ba%83%e3%81%84%e5%88%86%e9%87%8e%e3%81%a7%e8%ad%b0%e8%ab%96%e3%82%92%e3%80%8d%e3%80%80%e6%b2%96%e6%8c%af%e8%a8%88%e3%81%b8%e3%81%ae%e6%8f%90%e8%a8%80%e3%82%92%e6%9d%a5%e6%9c%88/

3時間に及ぶ審議の中、「沖縄21世紀ビジョン基本計画(沖縄振興計画)等総点検報告書(素案)」に対する答申()」は全会一致で承認されました。
また、西田会長から提案された「首里城正殿等の再興に関する提言()」も全会一致で採択されました。

2019年12月17日火曜日

報道記事/沖縄県振興審議会 正副部会長合同会議


県振興審への答申案決定 観光公害対策盛る
12/17沖縄タイムス)


上妻発言要旨


‘新たに生じた課題’に対応する‘新しい概念’

新たに生じた課題に対応する‘新しい概念’が必要ではないか。
離島とオーバーツーリズムの話をさせていただいたが、これまで、観光客数の増加を基調とする観光振興が優先され、目標とされてきた感がある。
しかし、より重要になってきているのは、必要によっては量の拡大を制御する<観光管理>という概念ではないか。
<関係人口>という概念もある。
十年前の計画策定時にはおそらくなかった概念。
「定住」でも「移住」でも「交流」でもない、離島過疎地域の振興に関わる重要な概念。
具体例の一つとして「離島留学」を取り上げた。
新たな課題に対応する‘新しい概念’も取り入れ、作業等を進めていただきたい。

「指標」「目標」の見直し

「指標」と「目標」双方の見直しが必要と考える。
一例だが、部会での配付資料の中で、「漂着ごみ」の取組みについて、
ビーチクリーン活動の参加者が目標(12,000人)を上回った(12,548人)ので‘達成’
というものがあった。
有益な活動ではあるものの、‘参加者の数が目標に届いたか’が指標となるのはおかしい。取組みと指標が十分に適合していないケースである。
もっぱら「入域客数の増加」を指標とする観光振興についても、見直しが必要。
「指標」や「目標」を抜本的に見直せる機会は総点検の時期。
具体的な作業は次の計画策定時かもしれないが、「指標」「目標」の適切なあり方に関わる論議は、すでにこの段階から始まっていると考える。
新しい沖縄振興にふさわしい「指標」「目標」を検討願いたい。

重点政策対象としての離島過疎地域

ほぼすべての意見・論議が他部会のテーマに関わる分野横断的な審議が離島過疎地域振興部会の特徴。
一方、各部会の審議結果報告でも、離島過疎地域に関わる様々な論議、いくつもの重要な意見を伺い、有り難く感じている。
離島過疎地域を特殊な地域として捉えるのではなく、沖縄の問題・課題の縮図、あるいは、沖縄全体の将来/近未来を占う地域として、その実状を見つめるべきと考える。
同時に、恒常的な人口減少が続く離島過疎地域の現実から考えるべきところは大きい。
これまでの沖縄振興の検証を含め、施策・事業の総動員を図るべき。

2019年12月13日金曜日

報道記事/西表島「利用者負担による保全の仕組み」関連


20191210日、環境省主催の公開会議に出席しました。



・西表石垣国立公園(西表地区)「利用者負担による保全の仕組み」勉強会
・会場:竹富町離島振興総合センター(西表島大原)
・主催:環境省西表自然保護官事務所




2019年12月4日水曜日

報道記事/「竹富町観光案内人条例」関連

20191128日、沖縄タイムスに以下の記事が掲載されました。




悪質ガイド後絶たず…世界遺産の登録前に西表島、観光ガイドを免許制に
11/28沖縄タイムス)
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/503492


2019年11月14日木曜日

NPW広報/第5回「離島過疎地域振興部会」開催

20191112日、「離島過疎地域振興部会」の第5回会合が開かれました。
会場:県立離島児童生徒支援センター



これまで、「離島の定住条件の整備」、「離島の特色を生かした産業振興」「人材育成・交流推進」などをテーマに審議を進めてきた当部会の最終会議となる第5回は、審議結果のとりまとめを中心に論議が進められました。
以下、上妻の発言要旨を記します。


新たな「指標」「目標」の設定へ
離島過疎地域に関わる様々な状況や動向、対応が求められる課題などが各委員から提起された。
これまでの「指標」と「目標設定」の中では扱われていない課題がいくつも浮かび上がっている。
十年に一度実施される総点検を機に、今後の沖縄振興に求められる「新たな指標」と「新たな目標」の設定に向けた検討作業を行うべき。


「観光管理」
「観光客数の増加」を指標としてきた従来の観光振興では対応できない重大な問題・課題が生じている。(オーバーツーリズムへの対応等)
「観光管理」の視点に立った新たな対策と取組みが不可欠である。


「関係人口」
「定住」とも「移住」とも「交流」とも異なる別の切り口。
10年前の総点検や基本計画策定時にはなかった概念。
今後の離島・過疎地域の振興には、「関係人口」の観点からの取組みも重要。
(例:離島留学)


離島の産廃・漂着ごみ処理に関して
与那国町長から、「離島の産業廃棄物や漂着ごみを回収するための焼却船」導入の必要性が提起された。現実味が低い等の見方もあるようだが、それは違う。
確か平成24年度頃、離島の建設廃材を回収し、沖縄本島で処理するリサイクル船の社会実験が実施されている。(一括交付金事業)
過去の事例・実績も含めて積極的検討を行うことを期待する。


島ごとに異なるニーズを把握すること
小職の要請に対応して作成された文書(ユニバーサルサービスの提供状況に関する資料)の中、福祉担当部局から重要な回答が示された。
「高齢者のニーズは離島ごとに異なることから、ニーズの充足度を介護サービスの多寡という指標では測定できない。ユニバーサルサービスの提供の観点から示すことは困難と考える。」
まさにその通り。ではどうするかが問題。

以下、離島の介護サービスに関わるトピックを取り上げたい。
竹富町福祉支援課による意識調査:
「居住する島で最後を迎えたい」(回答者の約7割)
「病気や介護が必要になった際が不安」(回答者の8割)
「在宅サービスの充実を希望(訪問看護、困ったときに宿泊できる施設、認知症対応等)」(回答者の8割超)

以上も踏まえて申し上げる。
島ごとに異なるニーズを把握すること。
併せて、共通解を検討し、対策・取組みに反映すること。
そうした積み重ねとともに、よりきめ細かな離島振興策を実行することを求める。


「克服すべき沖縄の固有課題」としての深掘りを
離島の条件不利性の克服については、「克服すべき沖縄の固有課題」(第4章)とまで言い切って特出しをしている。しかし、その記載内容は、第3章(基本施策の推進による成果と課題及びその対策)とまったく同じ。
第3章の検討を踏まえた上、「離島の条件不利性克服」について深掘りした内容を示してもらいたい。


観光、廃棄物の課題指摘/離島過疎地域振興部会
11/13宮古毎日新聞)
http://www.miyakomainichi.com/2019/11/125630/


十年に一度の「総点検」にあたって、離島・過疎地域の現状や課題について活発な論議が交わされ、大変充実した会議になったと思います。
貴重なご指導を賜りました嘉数啓部会長をはじめ、当部会に関わられた各位に深く感謝申し上げます。

2019年10月25日金曜日

NPW広報/第4回「離島過疎地域振興部会」開催

20191023日、「離島過疎地域振興部会」の第4回会合が開かれました。
会場:新沖縄県立図書館(会議室)



第4回部会では、「人材育成・交流推進」を中心に審議が行われました。
以下、上妻の発言要旨を記します。


災害発生時を想定した情報通信基盤の強化
ユニバーサルサービスの提供に関連し、情報通信基盤の整備状況が報告されたが、非常時、特に災害発生時の通信インフラの重要性を改めて提起したい。
9/30から10/1にかけて発生した八重山諸島での通信障害では、竹富町役場と町内各島の住民・消防団等との双方向の連絡が不能となった。
複数の島々で構成される自治体も念頭に、情報通信基盤を強化する必要がある。

離島におけるテレワーク活用への支援
与那国町長から、「離島でもIT技術を活かすことができる産業・雇用づくり」の必要性が提起された。一つの具体策として、テレワークの活用・推進を提言したい。
ITを活用し、遠隔地の不利性を解消するという面から、特に離島におけるテレワークの利活用や普及に向けた重点的支援を講じることが望まれる。


観光人材の育成に関して
観光人材育成研修は‘受講者数が目標値を上回っている’ とのことだが、現在取り組まれている「観光人材の育成」は、もっぱらサービスを提供する人材の育成・確保が中心か?
今後は、観光管理計画や観光地経営など、地域主体の観光を支える人材の育成がより重要な課題ではないか。その意味では、DMO等との関係も重要と考える。
‘行政と民間が連携した取組体制を強化’とあるが、離島観光を支える人材の育成や体制の整備について、沖縄県としての認識や考え方を伺いたい。


交流・協力活動の促進に関して
‘本島の児童生徒を離島へ派遣し、離島地域の人々との交流を通じて離島の重要性、特殊性及び魅力等の認識を深めさせる取組などを行った’とのこと。ここでいう‘特殊性’とは、どう理解すれば良いか?
また‘本島住民の離島地域への関心は低い状況にある’との旨だが、何をもってそのように現状を評価したのか、根拠等があれば教えてほしい。また、なぜ関心が低いのか、分析や考察があれば教えてほしい。


関係人口の視点から見た離島留学の意義
‘交流人口を増大させ、離島地域の活性化を図る必要がある’との方向性が示されているが、別の観点からのアプローチもあって良いのではないか。
具体的には「離島留学」という取組みについて、「関係人口」「県外」への視点と合わせて申し上げたい。
離島留学は、県内では渡嘉敷島,慶留間島,鳩間島,久高島(小中学校)、 久米島(高等学校)などで実施されている。また、全国各地の過疎地では、山村留学も長年にわたって行われてきている。
総点検報告書では‘社会的サービスや集落機能を維持する持続可能な地域づくり’が明記されているが(P675)、離島・過疎地域の存続(地域社会の維持)のための切実な取組みとして、また、関係人口を創出する具体策として、改めて「離島留学」を評価し、位置づけるべきではないか。



報告書作成で意見交換 「通信インフラ問題明記を」
10/24八重山日報)



県振興審議会部会で意見交換 「離島の人材育成に力を」
10/24八重山毎日新聞)


2019年10月15日火曜日

NPW広報/第3回「離島過疎地域振興部会」開催

20191011日、「離島過疎地域振興部会」の第3回会合が開かれました。
会場は、高校のない離島から沖縄本島に来た生徒のための寄宿舎「県立離島児童生徒支援センター」。
「群星(むるぶし)寮」の愛称で知られる同センターでは、現在151人の生徒が寮生として生活し、郷里を離れて学業等に励んでいます。





第3回部会では、「離島の特色を生かした産業振興と新たな展開」をテーマに審議が行われました。
以下、上妻の発言要旨を記します。


農産物・農産加工品のブランド化
離島・過疎地域産品のブランド化の成功事例があったら教えてほしい。
豊富な抗酸化物質や高ミネラル成分を有する島野菜、薬草などがあるが、エビデンスの解明を含め、品質や付加価値の立証に必要な支援は行われているか?


小規模離島事業者への支援(特産品の販路拡大など)
‘少量・多品種・高付加価値商品の島外への販路拡大’は重要。
‘支援が行き届きにくかった小規模離島の事業者への支援’について、これまでの取組み、今後の展開や可能性について教えてもらいたい。


着地型観光プログラムに係る基礎データについて
観光客増加への誘客活動(量の拡大)にとどまらない観光振興(質の向上)が課題。
離島観光の現状を把握し、今後の振興を考える上で必要な、各離島の「観光客の滞在期間」(宿泊、日帰り等の状況)、「観光消費額」(総額、一人当たり)等は把握できるか?
‘島々の個性や魅力を生かした着地型観光プログラムの開発’に必要な基礎データの整備を求める。


地元収益拡大への取組み(新たな旅行商品の造成、担い手の育成)
‘認知度が低い小規模離島への重点的支援’は重要。それぞれの島の条件・状況と地域のニーズに適う支援を講じるべき。
‘個人旅行・フリープランが主体となっていることを踏まえた旅行商品造成’には、地元の収益を重視した具体策が必要。
「第3種旅行業者」制度(区域を限定した募集型企画旅行が実施可能)の活用など、離島における担い手の育成・支援を行うべき。
地元収益の創出・拡大に関わる県の取組みを訊きたい。


クルーズ船誘致について(観光管理の視点から)
「寄港回数の増加」だけを指標とする目標値の設定にいささか違和感を覚える。
寄港地の利益に結びつかない等、クルーズ船ツアーは必ずしも手放しで歓迎できるものばかりではない。近年はクルーズ船の寄港を規制・制限する動きも世界各地の観光都市でみられる。
経済効果の検証例:現地での一人当たり観光消費額、寄港に伴う問題例:交通や環境への影響を含め、総合的な分析・評価が必要ではないか。
クルーズ船について、良質な観光を確保する「観光管理」の視点と対策を求める。


外国人材の活用に関して
改正入管法に基づく「特定技能外国人」は新たな焦点。
今後5年間の宿泊業分野の受入上限は22,000 人(全国)だが、本当に‘受入れ拡大に向けた取組’を推進するのか?
人手不足を補う「労働力」としてだけでなく、「生活者」として外国人を受け入れる体制の整備が不可欠。地域社会との関わりを抜きにした安直な受入れは進めるべきではない。
報告書が明記する‘多様な人材の就業促進、職業能力向上、労働環境・処遇改善への取組’がより重要。


世界自然遺産登録と持続可能な観光
「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」の世界自然遺産登録後は、さらに多くの観光客が押し寄せる状況が想定される。
守るべき環境の保護・保全にあたって「オーバーツーリズム対策」は喫緊の課題。
観光客の拡大を基調とする従来の方針の中、十分な‘持続可能な観光管理’を行えるのか、いささか懸念を感じる。
「世界自然遺産候補地連絡会議」西表島部会では、①「受入れ可能な来訪者の調査・設定」、②「地域主導の来訪者管理体制」、③「環境負荷低減のための来訪者負担金」、④「観光関連産業が地域社会に貢献する仕組み」を含む基本計画素案が示された。
①~④は‘持続可能な観光管理’のための重要事項。世界遺産登録の対象地区だけではなく、他の離島でも検討すべき課題と考える。


「観光客数の増加」だけを目標とするのか?
「目標とするすがた」の達成状況について、<離島への観光客数の増加>を指標に、基準値166.5 万人(平成25年)→現状値271.3 万人平成29年)等の状況が示され、さらに、令和3年度の目標値として380 万人が明記されている。
今後も「量の拡大」を最優先とするなら、こうした離島観光振興策には違和感を覚える。
オーバーツーリズムも、観光公害も、受け入れる側がきちんとした観光管理をやるか・やらないかが焦点。
今回の総点検を機に、「観光客数の増加」だけを評価指標とする目標設定の見直しと改善、「持続可能な観光管理」を重視した離島振興の必要性を申し上げておきたい。



オーバーツーリズム対策 「総合的な分析必要」
10/12八重山毎日新聞)



離島観光 持続可能に 適切な客数、質求める
10/12琉球新報)


2019年9月21日土曜日

NPW広報/沖縄県振興審議会「離島過疎地域振興部会」開催

2019917日、沖縄県振興審議会のつの専門部会の一つ、「離島過疎地域振興部会」の第2回会合が開かれました。
委員は12名。部会長は国際的な島嶼学研究の第一人者でもある嘉数啓琉球大学名誉教授。NPW代表理事・上妻は副部会長として参画しています。


沖縄県振興審議会「離島過疎地域振興部会」委員
嘉数  啓 琉球大学名誉教授(部会長)
上妻  毅 一般社団法人ニュー・パブリック・ワークス代表理事(副部会長)
新垣 盛雄 一般社団法人沖縄旅客船協会 会長
鯨本あつこ 特定非営利活動法人離島経済新聞社 統括編集長
金城 清典 琉球エアーコミューター株式会社 代表取締役社長
古謝 安子 琉球大学医学部講師
崎原 永作 公益社団法人地域医療振興協会 理事
富永 千尋 琉球大学研究推進機構研究企画室 特命教授
外間 守吉 沖縄県離島振興協議会会長/与那国町長
諸見里安敏 沖縄県離島海運振興株式会社 代表取締役社長
山城 定雄 公益社団法人沖縄県地域振興協会プログラムオフィサー
龍  秀樹 株式会社NTTドコモ九州支社 沖縄支店長


8月の第1回会合に続く今回は、「離島の定住条件の整備」を主題に審議が行われました。
事務局(県企画部地域・離島課)より『沖縄21世紀ビジョン基本計画等総点検報告書(素案)』に則した報告・説明が行われた後、離島・過疎地域の現状や課題を中心に、各委員から様々なコメントや意見が述べられました。
その中には、沖縄県としての取組みは充分か、地域・住民の切実なニーズに対応しているのか、といった問いかけや問題提起もありました。

以下、上妻の発言要旨を記します。


ユニバーサルサービス=地域による分け隔てのない便益の提供
定住条件整備として十分だったこと・不十分だったことをクリアにする意味から、ユニバーサルサービスの提供に至っていないところは何か、状況を把握したい。


超高速ブロードバンド環境の構築
基盤整備率83.7%(平成29年度)
残り16.3%の未整備の離島を確認したい。
特に小中学校があって、なお未整備の地区は?


「沖縄離島住民等交通コスト負担軽減事業」など
将来にわたっての実施や安定運用を懸念する声あり。
‘実施効果があった’ことよりも‘継続できるか’が切実かつ重大な問題。
恒久制度化と安定的財源の確保が重要課題。


海岸漂着物の回収・処理
十分な取組みが行われてきたと言えるか?
長年にわたって大量の漂着が繰り返され、生態系等に多大な負の影響を与えている。
特に緊急性の高い「危険・有害な漂着物」について、早急に実態の把握を。
また、市町村とともに、対策に必要な措置を国に強く求めるべき。


離島患者の経済的負担軽減
交通費の補助だけでなく、がん・難病など島外で治療等が必要な離島在住の患者と家族のための宿泊施設(ファミリーハウス)等も重要。
支援継続、必要に応じて強化を。


宿泊税(法定外目的税)について
県が導入への準備等を進めている「宿泊税」は、離島住民も課税対象となるのか?
島では果たせない目的を充たすための宿泊にも課税するのか?
適切な措置が講じられないとすれば、当「宿泊税」は「離島の定住条件整備」に逆行する。


医療・福祉分野の専門人材の確保
‘質の高い福祉・介護人材を地域完結型で育成’とあるが、本当に地域完結型で人材を育成できるのか?
介護-医療の連携、地域社会での認知症対策強化等の状況下、看護師など医療系専門人材の確保は小中規模の離島にとって非常に切実な問題。


過疎・辺地地域の振興に関して
市町村別や島別に過疎の進捗状況等を把握することが先決ではないか。
過疎・辺地の振興に関する取組みは、道路整備、移住対策、その他(地域づくり人材等)に尽きるのか?


離島地域の「廃棄物処理」について、総点検における扱いを問う。
課題では言及しながら(広域的対応が困難、高コスト構造とならざるを得ない..etc.)、現状、取組み、成果ともに不明。
一般廃棄物処理が市区町村の事務であることは承知。他方、『21世紀ビジョン』では、離島の生活基盤の充実・強化について‘県民全体で支え合う新たな仕組みを構築’の旨を明記。
離島自治体の深刻な実状等をふまえ、取り組むべき課題や方策など、「廃棄物処理」について総点検としてしっかり扱うべき。


移住対策
専門的人材の確保に向けた移住対策の強化も重要。
例えば「保育士」の確保を目的とする事業等も実施されている。その実績は?


UJIターンの環境整備
具体的な取組み状況は?


持続可能な地域づくりの具体策
‘社会的サービスや集落機能を維持する持続可能な地域づくりに取り組む必要がある’との記載。
極めて重要と考えるが、その具体策は?



離島住民へ影響懸念 離島過疎振興部会開く 県が進める宿泊税
9/18八重山日報)
https://www.yaeyama-nippo.co.jp/archives/8923


本部会は、あと3回の会議開催(年内)を予定しています。
離島・過疎地域の実情と課題を見据えた論議を通して、審議会がより有意義なものとなるよう、微力を尽くしたいと思います。