審議会委員、専門委員、沖縄県部局長ら60数名同席の中、「沖縄21世紀ビジョン基本計画等総点検報告書」に対する答申案などについて公開審議が行われました。
会議では、まず7月以降半年にわたる審議を重ねてきた9つの部会長から報告と意見陳述が行われました。
NPW代表理事・上妻は、海外出張中の嘉数啓離島過疎地域振興部会長(琉球大学名誉教授)に代わり、当部会の審議に関わる重要事項を中心に意見を述べました。
以下、上妻の発言(全文)を記します。
◆はじめに
副部会長の上妻でございます。よろしくお願いいたします。
当部会は、「ほぼすべての意見・論議が他の部会のテーマに関わる」というところ、例えば「医療・福祉」「観光」「人材育成」など、分野を横断した審議の特徴がございます。
お伝えしたいことはたくさんございますが、幾つかの重要事項についてお話しさせていただきます。
◆人材の確保
一点目は、多くの島々と過疎地域が直面している‘人口減少の中の人材の確保’という問題です。
特に、医師・保健師など医療に関わる人材の確保は、常に切実な問題です。
一方、航路を支える船員、空港職員の確保なども問題となりつつあります。
「離島住民の命と暮らしを支える担い手の確保」-今後、より切迫した問題になると思います。
◆在宅介護・医療
離島での「介護」「医療」の問題がございます。
例えば、竹富町のアンケートでは、お年寄りの約7割が、「生まれ育った島で最期を迎えたい」と答え、ほとんどの方が「在宅での介護・医療の充実」を求めています。
しかし、「島に常駐してくれる医師を一人確保するのも大変」という現実があります。
入院のために島を離れるとき、「ご近所や友人が次々にお別れの挨拶に来る」という切ない話を聞いたこともあります。
離島の「在宅介護」「在宅医療」、そして「終末医療」をどう充実できるか。
切実な問題です。
◆人口減少
次に、「人口」に関してです。
県内の有人離島は現在37島ですが、50年から60年の期間でみると、石垣島を除くすべての島で人口は減少しています。
住民が‘復帰前の3分の1以下’になった島もあります。
申し上げたいのは、多くの島々で、「自然増を上回る社会減が進行している」ということです。
多良間島のケースを申しますと、
・20年前、多良間島の出生率は「3.14」-全国で断トツの1位でした。
・その後も「平均を上回る出生率」を保っています。
・しかし、「3.14」の時期を含め、人口は減少しています。
◆「定住条件の整備」が向き合うべきこと
このような状況の中、申し上げた「人材確保」の問題があり、「小中学校存続」の問題があり、「地域社会そのものの維持・存続」という課題が浮かび上がっています。
県の施策である「定住条件の整備」は、
‘恒常的な人口減少’
‘自然増を上回る社会減’
‘地域社会の存続’
‘担い手の確保’
こうした現実と向き合うべきで、悠長な話ではありません。
◆‘持続可能な離島観光’に関して
「観光」についても若干触れたいと思います。
「オーバーツーリズム」が論点となりました。
総点検では、「入域客数」が観光振興の主たる指標です。
離島の観光も、「観光客数の増加」が評価の指標、目標となっています。
しかし、例えば竹富島の場合、住民 350人ほどの島に、年間50万人を超える観光客が訪れています。
観光客の増大によって‘島の自然・文化・生活環境が悪化すること’を島の皆さんは望んでいません。‘これ以上の観光客増’も望んでいないように感じます。
沖縄県として「質を重視した観光振興」を進めていく旨は伺っています。
しかし、それぞれの島について、
・どれだけの観光客が来て、
・滞在日数あるいは滞在時間はどれぐらいで、
・いくらぐらいお金を使っているか?
こうしたデータは未整備と聞きました。
異なる条件や事情に則した「島単位の観光戦略」が重要と考えます。
基礎的なデータは整える必要があると思います。
また、「オーバーツーリズム」については、<観光管理>という概念が重要と考えます。
部会では、
・<量の拡大>を基調とする従来の指標・目標を見直すこと
・<観光管理>という観点で、‘良質で、持続可能な観光’を推進すること
そうした必要性をお話しさせていただきました。
◆むすび
最後に申し上げます。
「離島・過疎地域」を特殊な地域として捉えず、沖縄の問題・課題の縮図、あるいは、沖縄全体の将来を占う地域として、実情を見つめていただきたいと存じます。
特に‘人口減が続く離島の現実’から考えるべきことは大きいと思います。
これまでの振興策の検証を含め、‘離島・過疎地への施策・事業の総動員’を願っております。以上です。
振興計画点検を承認 審議会、県に来月答申
(12/27沖縄タイムス)
「幅広い分野で議論を」 沖振計への提言を来月答申
(12/26 RBCニュース)
https://www.rbc.co.jp/news_rbc/%e3%80%8c%e5%b9%85%e5%ba%83%e3%81%84%e5%88%86%e9%87%8e%e3%81%a7%e8%ad%b0%e8%ab%96%e3%82%92%e3%80%8d%e3%80%80%e6%b2%96%e6%8c%af%e8%a8%88%e3%81%b8%e3%81%ae%e6%8f%90%e8%a8%80%e3%82%92%e6%9d%a5%e6%9c%88/
3時間に及ぶ審議の中、「沖縄21世紀ビジョン基本計画(沖縄振興計画)等総点検報告書(素案)」に対する答申(案)」は全会一致で承認されました。また、西田会長から提案された「首里城正殿等の再興に関する提言(案)」も全会一致で採択されました。
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