会場は、高校のない離島から沖縄本島に来た生徒のための寄宿舎「県立離島児童生徒支援センター」。
「群星(むるぶし)寮」の愛称で知られる同センターでは、現在151人の生徒が寮生として生活し、郷里を離れて学業等に励んでいます。
第3回部会では、「離島の特色を生かした産業振興と新たな展開」をテーマに審議が行われました。
以下、上妻の発言要旨を記します。
◆農産物・農産加工品のブランド化
離島・過疎地域産品のブランド化の成功事例があったら教えてほしい。
豊富な抗酸化物質や高ミネラル成分を有する島野菜、薬草などがあるが、エビデンスの解明を含め、品質や付加価値の立証に必要な支援は行われているか?
◆小規模離島事業者への支援(特産品の販路拡大など)
‘少量・多品種・高付加価値商品の島外への販路拡大’は重要。
‘支援が行き届きにくかった小規模離島の事業者への支援’について、これまでの取組み、今後の展開や可能性について教えてもらいたい。
◆着地型観光プログラムに係る基礎データについて
観光客増加への誘客活動(量の拡大)にとどまらない観光振興(質の向上)が課題。
離島観光の現状を把握し、今後の振興を考える上で必要な、各離島の「観光客の滞在期間」(宿泊、日帰り等の状況)、「観光消費額」(総額、一人当たり)等は把握できるか?‘島々の個性や魅力を生かした着地型観光プログラムの開発’に必要な基礎データの整備を求める。
‘認知度が低い小規模離島への重点的支援’は重要。それぞれの島の条件・状況と地域のニーズに適う支援を講じるべき。
‘個人旅行・フリープランが主体となっていることを踏まえた旅行商品造成’には、地元の収益を重視した具体策が必要。
「第3種旅行業者」制度(区域を限定した募集型企画旅行が実施可能)の活用など、離島における担い手の育成・支援を行うべき。
地元収益の創出・拡大に関わる県の取組みを訊きたい。
◆クルーズ船誘致について(観光管理の視点から)
「寄港回数の増加」だけを指標とする目標値の設定にいささか違和感を覚える。
寄港地の利益に結びつかない等、クルーズ船ツアーは必ずしも手放しで歓迎できるものばかりではない。近年はクルーズ船の寄港を規制・制限する動きも世界各地の観光都市でみられる。
経済効果の検証(例:現地での一人当たり観光消費額)、寄港に伴う問題(例:交通や環境への影響)を含め、総合的な分析・評価が必要ではないか。
クルーズ船について、良質な観光を確保する「観光管理」の視点と対策を求める。
◆外国人材の活用に関して
改正入管法に基づく「特定技能外国人」は新たな焦点。
今後5年間の宿泊業分野の受入上限は22,000 人(全国)だが、本当に‘受入れ拡大に向けた取組’を推進するのか?
人手不足を補う「労働力」としてだけでなく、「生活者」として外国人を受け入れる体制の整備が不可欠。地域社会との関わりを抜きにした安直な受入れは進めるべきではない。
報告書が明記する‘多様な人材の就業促進、職業能力向上、労働環境・処遇改善への取組’がより重要。
◆世界自然遺産登録と持続可能な観光
「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」の世界自然遺産登録後は、さらに多くの観光客が押し寄せる状況が想定される。
守るべき環境の保護・保全にあたって「オーバーツーリズム対策」は喫緊の課題。
観光客の拡大を基調とする従来の方針の中、十分な‘持続可能な観光管理’を行えるのか、いささか懸念を感じる。
「世界自然遺産候補地連絡会議」西表島部会では、①「受入れ可能な来訪者の調査・設定」、②「地域主導の来訪者管理体制」、③「環境負荷低減のための来訪者負担金」、④「観光関連産業が地域社会に貢献する仕組み」を含む基本計画素案が示された。①~④は‘持続可能な観光管理’のための重要事項。世界遺産登録の対象地区だけではなく、他の離島でも検討すべき課題と考える。
◆「観光客数の増加」だけを目標とするのか?
「目標とするすがた」の達成状況について、<離島への観光客数の増加>を指標に、基準値166.5 万人(平成25年)→現状値271.3
万人(平成29年)等の状況が示され、さらに、令和3年度の目標値として380 万人が明記されている。
今後も「量の拡大」を最優先とするなら、こうした離島観光振興策には違和感を覚える。
オーバーツーリズムも、観光公害も、受け入れる側がきちんとした観光管理をやるか・やらないかが焦点。
今回の総点検を機に、「観光客数の増加」だけを評価指標とする目標設定の見直しと改善、「持続可能な観光管理」を重視した離島振興の必要性を申し上げておきたい。
オーバーツーリズム対策 「総合的な分析必要」
(10/12八重山毎日新聞)
離島観光 持続可能に 適切な客数、質求める
(10/12琉球新報)
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