2019年11月15日~22日、富川盛武沖縄県副知事ら12名による以下の海外出張調査が行われました。
【概要】
新たな沖縄振興計画に関わる重要事項を検討する見地から、オーバーツーリズム対策の先進地であるイタリアのサルディーニャ、欧州の最先端物流拠点であるオランダのロッテルダム等を対象とする現地調査を実施。【主な日程】
11月17~19日:サルディーニャ州(イタリア)
・訪問先:カリアリ市、サルディーニャ州政府、カリアリ大学、ヴィッラシミウス市
11月19~20日:アムステルダム市、ロッテルダム市(オランダ)
・訪問先:JETROアムステルダム事務所、アールスメール花市場、VRR社(物流関連企業)、ロッテルダム港湾公社、日本通運(ロッテルダム事務所)等
上妻は「新沖縄発展戦略検討会議」の委員として本調査に参加しました。
また、帰国後の12月20日には、沖縄県庁にて記者会見が行われ、副知事ら調査チームによる出張報告が行われました。
イタリアはサルディーニャ州政府と2つの自治体(カリアリ市、ヴィッラシミウス市)について、オランダはロッテルダム港湾公社について、それぞれ興味深かったこと、印象に残ったことを報告申し上げたい。
サルディーニャ州政府
サルディーニャの特徴:
‘期間限定のオーバーツーリズム’
‘期間限定のオーバーツーリズム’
・サルディーニャ州全体の観光客:年間1500万人
・但し、5月~8月の四ヶ月に集中。観光客の8割の目的は海(特にビーチ)。
サルディーニャ島の規模
・面積:四国より大きく九州より小さい(約24,090㎢)
・人口は約160万人。島をめぐる海岸線全土に200近くのビーチ。
沖縄が今後直面する(あるいはすでに直面している)オーバーツーリズムと共通する面、様相を異にする面がある。
州政府ではオフシーズン対策の話が先行。
‘ビーチオンリーの観光地からの脱却’という方向性。
・内陸部の観光資源、「食」や「ワイン」、「遺跡」「祭り」などの歴史・文化、自転車・その他スポーツの「体験型ツーリズム」を積極的にプロモート。
・内陸部へのアクセス、移動環境の充実も課題。
かつての主力産業は化学産業。しかし、ルーマニア等の安い労働力を求め製造業が空洞化。
現在のサルディーニャを支える主力産業は観光。
それでも年間3000人の若者が流出(大学卒業後、島外へ)
州地域担当相(大臣)コメント
「雇用、ビジネスなど‘チャンスのある島への脱皮’が不可欠」カリアリ市
明快な観光ポリシー
・観光客を増やしたい
・収益を向上させる
・通年観光をめざす
・人の移動を調節するプログラムを築く
オーバーツーリズムに伴う問題(渋滞、混雑、ゴミ、騒音など)と対策
・短期滞在(2~3泊)のつまみ食い的観光を改善
・人数制限を含むビーチの保全と持続的利用を検討
ヴィッラシミウス市
町村規模の小さな自治体(コミューネ)だが、学ぶべき点は大きかった。
基本ポリシー:
‘海を守る’+‘持続可能な観光’
‘海を守る’+‘持続可能な観光’
・海洋保護区域の指定:ゾーンを定め、禁止する活動(水泳、スキューバ、素潜り漁等)も規定
・水不足への対応、ゴミ問題(分別・リサイクル、コンポスト)、照明(LED化)、ハイブリッド車 ..etc.
もっとも参考になったこと:ゾーニングによる建築規制
・海岸線から500m以内 ホテル等建設禁止
・海岸線から2km以内 住宅等建設禁止
・州法による保護指定地域の中、市がより具体的な規制を実施。
ひるがえって、「沖縄の海岸線」は大丈夫か?
県内の海岸と周辺は相当規模の土地の所有権が県外にわたっている状況も。今後、開発圧力はさらに増大する。
乱開発の規制、自然環境、景観、住民の生活環境を守るための手立て、条例を含む制度面の保全措置は不十分。
サルディーニャ州とヴィッラシミウス市の事例に学ぶべきことは大きい。ロッテルダム港湾公社
主な質問:①港湾の経営主体について、②CO2削減の取組み
港湾経営の転換
・2004年、ロッテルダム市から港湾公社(ポートオーソリティ)に移行(株式会社化)
・現在もロッテルダム市は、オーナー(土地所有者)かつ株主
民間の人材とノウハウが導入される中、間違いなく「機動力」は向上した印象。
・ロッテルダム港の成長・発展と雇用を念頭に「ビジョン」「目標」「マスタープラン」「シナリオ」を構築
・新事業への投資、新たな企業立地の促進、新規分野への進出等を推進CO2削減の背景
・工業港湾地域としての責任(過去:大気汚染・水質汚染の発生源としての実態)
・オランダの地理的特性(国土の4分の1が海抜ゼロメートル以下)
・EUの枠組みと気候変動への取組み(特にCO2削減)
CO2削減への取組みは港湾経営の効率化や高度化につながったか?
・詳細不明。しかし、廃棄物を化学原料に転換する新事業には市も民間も投資..etc.
最新の取組み:「港湾経営最適化ソフト」によるデジタルソリューション
・港湾活動・コミュニティ(待ち時間を20%減)
・物流チェーン(ピザでもできるトレースを大型貨物で)
ひるがえって沖縄の状況は?
港湾経営もオペレーションも最適・最善には至っていない。
規模・条件は違えど学ぶべき点は大きい。
(12/24 RBCニュース)
https://www.rbc.co.jp/news_rbc/%e6%8c%81%e7%b6%9a%e5%8f%af%e8%83%bd%e3%81%aa%e8%a6%b3%e5%85%89%e6%ac%a7%e5%b7%9e%e3%81%ae%e4%ba%8b%e4%be%8b%e3%82%92%e5%a0%b1%e5%91%8a/