2021年9月13日月曜日

令和3年度「離島過疎地域振興部会」(第4回)開催

2021913日、第4回「離島過疎地域振興部会」が開かれました。

新たな振興計画(素案)の審議として実質最後の機会となる今回は、「新たに生じた課題への対応」を主要テーマに論議が行われました。

以下、上妻発言要旨を記します。

Ⅰ.離島・過疎地域の振興に関わる「新たに生じた課題」

20203月『総点検報告書』(関連事項抜粋)

離島を支える人材の確保・育成

▽産業に携わる担い手不足が深刻

離島を支える多様な人材の確保

▽人材の柔軟かつ流動的な活用を支える制度づくり ▽県外からのUIターン促進、ワーケーションなど多様な働き方への対応

人口減少対策と地域の存続

▽小規模離島や過疎地域の小中学校の維持・存続など

離島・過疎地域における関係人口の拡大

▽定住、交流だけではない「関係人口」の創出 ▽離島留学など具体的取組の推進

その他

▽農業等の新規参入者が定住できる住居がない ▽沖縄の離島では空き家が活用されていない

私見(上妻)

地域・コミュニティの存続、人材の確保・育成、UIターン促進、関係人口創出、移住・定住を支える住宅整備などについて、個別の施策実施にとどまらず、相互の関連性を踏まえた取組(施策連携)を強化すべき。

 

Ⅱ.施策共通の基軸:「持続可能な地域づくり」

20203月『総点検報告書』(関連事項抜粋)

過疎・辺地地域の振興

▽社会的サービスや集落機能の維持 ▽UJIターンの環境整備、関係人口の創出等

20203月『新沖縄発展戦略』(関連事項抜粋)

離島・過疎地域における社会減対策の強化

▽従来の定住条件の整備にとどまらない持続可能な地域づくり ▽地域の活力確保、緩やかな人口減少への対応、豊かさを失わない「適疎」の視点

持続可能な地域づくり

▽社会サービスとコミュニティの維持・存続 ▽地域を支える多様な関係人口との発展的連携

UJIターンの促進と離島力の発揮

▽UJIターンと新たな人材の確保(専門人材を含む) ▽子育て支援体制や教育環境の充実

参考「特定地域づくり事業協同組合制度」について

人口減少地域の農林水産業や商工業の担い手の確保を目的に、地元が出資・設立する人材派遣組合を支援。

季節毎の需要に応じて複数の仕事に従事する移住者などに年400万円程度の給与を保証。(国と市町村が半額負担)

人手を必要としながら雇用には踏み切れない実情等を考慮し、働く場の確保、移住・定住の促進を図る。

 

Ⅲ.「離島を核とする交流の活性化と関係人口の創出」(基本施策4-⑷)

関係人口について

 

様々な形で地域や住民と継続して関わる多様な主体

郷里出身者、地域にルーツがある者(郷友会、その他)

一時的転入者、地域外からの通勤・通学者、ボランティア

縁故者(過去の勤務・居住・滞在など何らかの関わりがある者)

ふるさと納税者、旅行者・観光客(リピーター)、その他

新たな動向

(1)準島民制度

複数の国境離島自治体で導入され、航路運賃割引等の対象となっている。

(例島外在住の生徒・学生、離島留学生の家族・保護者、体験移住・居住・就業等を目的とする来島者、反復・継続して研修等を行う者

(2)ふるさと住民制度

徳島県佐那河内村ゆかりのある村外の人を登録。ふるさと住民票の交付、地域おこし支援員としての村づくりへの参加など。

(3)その他

リモートワーカー、オンラインで繋がる新しい関係者・縁故者など

関係人口の特質

多種多様な関係人口は数値化が困難。「増やす」よりも「深さ」「強さ」が重要。

「行ったこと/買ったこと/住んだことがある」を超える関係づくりが要件。

新たな振興計画(素案)における「関係人口」の位置づけ(関連事項抜粋)

離島を核とする関係人口の創出と移住促進(素案P157

▽働きながら離島地域での滞在を満喫できる環境整備 ▽ワーケーション来訪者や地域振興に関心のある企業と接する機会を設けるなど関係人口との連携による新しい地域づくり

Ⅳ.所 見

素案について

「新たに生じた課題」に位置づけられた重要事項にもかかわらず、<離島を核とする関係人口の創出>に係る施策は貧弱かつ不十分ではないか。

関係人口の多様性や状況把握の難しさなどから、何をすればよいかが明確ではない状況も推察。沖縄県として以下の取組を打ち出すべき。

(1)関係人口の創出・拡大と新しい地域づくりに関する調査・研究等の推進

(2)関係人口との連携による活性化や地域づくりを目指す市町村の取組支援

関係人口創出と新しい地域づくりへの取組(案)

島に関心を持つ人材と地域を結ぶマッチング事業

快適なリモートワークを支える環境整備(滞在、就労、生活、居住等)

新たな関係人口創出を視野に入れたレスポンシブルツーリズム等の推進

島の魅力や価値を旅行者や観光客が共有するレスポンシブルツーリズムは関係人口創出を導く新たな手立て。ユニバーサルツーリズムを通じた観光困難者(障害者、高齢者、療養者等)と家族等を対象とする新しい関係構築も考えられる。

移住・定住、多様な滞在・居住への対応 (多様なニーズに応える住宅整備)

公営住宅の入居要件を充たさないUIターン者等に適応する住宅整備

ワーケーションを含む多様な滞在・居住のニーズを踏まえた住居等の提供

島根県海士町では、家主から10年間空き家を借り受け、町が家屋改修や固定資産税の負担等を行う取組を実施。

関連施策に関わる意見

地域コミュニティの活動支援(素案P6869

持続可能な地域づくりを担う人材の育成・確保(素案P171

地域産業を担う人づくり(素案P174175

持続可能な地域づくりを支える取組として、個別の施策実施にとどまらず、地域の実状を踏まえた実効的推進、施策間の連携、適切な政策評価を求める。

<地域コミュニティの活動主体><地域づくりの担い手となる人材>に関しては、離島や過疎地域の実態に適う施策と成果指標の設定が必要。

<地域産業を担う人材>に関しては、前掲「特定地域づくり事業協同組合制度」の活用を含め、地域の切実なニーズに応える取組を求める。

総括

今後の離島・過疎地域では‘自然減の中の社会減’への移行、‘限界離島’の発生等も懸念される。

持続可能な地域づくりを軸に市町村との連携を強化し、関係人口の創出・拡大を含む新しいアプローチを多角的に推進すること。

2021年9月1日水曜日

令和3年度「離島過疎地域振興部会」(第3回)開催

202191日、第3回「離島過疎地域振興部会」が開かれました。

会議後半は「農林水産業振興部会」との合同会議として開催され、「離島ごとの環境・特性を生かした農林水産業の振興」等をテーマに論議が交わされました。

以下、上妻発言要旨

離島ごとの環境・特性を生かした農林水産業の振興(産業振興)

 

Ⅰ.就業者減少の中の「持続可能な離島モデル」

 

離島過疎地域生産地としての大きな役割

離島過疎地域の人口

(ア)県内15の離島市町村沖縄県全人口の8.6%ほど

(イ)離島市町村に北部4町村を加えた離島過疎地域全人口の約10

一方、(ア)(イ)の農林水産生産量が沖縄県全体に占める割合は格段に大きい。

新しい振興計画の中で‘離島過疎地域が生産地として果たしている大きな役割’が明確に読み取れるよう配慮願いたい。

農林水産業持続可能な雇用としての重要性

産業が限られる離島過疎地域にとって農林水産業は非常に重要。

一次産業が基幹産業の島 (例)黒島、多良間島

就業者の67割を一次産業が占める島もある (例)津堅島、来間島

人口減少の観点からも‘持続可能な産業かつ雇用’としての農林水産業の重要性は極めて大きい。

就業者数の減少

危惧されるのは就業者数の減少。

県内37有人離島の産業別就業者の増減国勢調査ベース

農業従事者20109,763人→20158,6841,079

相当規模の減少であることは間違いない。

2015年→2020年はどうだったか? 

離島農業の担い手問題

「総点検報告書」(20203月)に挙げられた対策

○農林水産業、食品加工業等を支える担い手の育成や技術支援

○新規就農者の長期的な育成・確保青年、女性、農外など幅広い層への研修の充実等

○雇用就農の促進および受け皿の農業法人の育成、就農希望者とのマッチング等

新計画における政策は?

20102015年の農業従事者の減少

沖縄全体2,004人(25,98123,977)=7.7%減

離島地域1,079人(9,7638,684)=11%減

離島の就業者減少はより顕著。‘それは致し方ない’ということか?

<離島ごとの環境・特性を生かした農林水産業の振興>(素案P131132を読む限り、就業者減少への対応策は見えない。

<農林水産業を支える多様な担い手の育成・確保>(素案P175、<担い手の経営力強化>(素案P120121で離島地域もカバーするということか?

持続可能な離島モデルを

沖縄の農林水産の基盤である離島過疎地域で、県全体に先駆けて‘担い手の減少’が進行中。

その一方で「生産量」「生産高」の拡大を見込めるのか?

‘今後、状況は深刻化していく’という想定の中で「持続可能なモデル」を創れるか。離島過疎地域の切実な状況を踏まえた政策、具体策の検討を願う。

 

以下、追加意見

Ⅱ.離島過疎地域の農水振興戦略付加価値創出、流通対策、地産地消

 

「離島農林水産物の生産振興とブランド化の推進」について

素案記載の骨子

○各離島の特色を生かした園芸作物のブランド化

→定時・定量・定品質の出荷が可能な拠点産地の形成など

○流通条件の不利性解消

→流通施設の整備、輸送コストの低減など

○域内経済循環の拡大

→農商工連携による付加価値の創出、生産品のブランド化など

これらは、県全体の農水振興関連施策と合わせて展開すべき。

関連施策<多様なニーズに対応するフードバリューチェーンの強化>(素案P118

○食品産業など他産業との連携による農林水産物の付加価値向上

○農林水産物の輸送コストの低減対策、総合的な流通の合理化

○地産地消等による県産農林水産物の消費拡大

<健康機能性のエビデンスに基づくブランディング>(素案P119

離島過疎地域の園芸作物(島野菜、薬草など)の生産・技術支援とより強く結びつけるべき。

→健康・長寿に関わるエビデンス(例:抗酸化物質、ミネラル)とともに付加価値を創出、さらにブランド化を目指す。

<輸送コストの低減対策、総合的な流通の合理化>(素案P119

○生産地から消費地までのコールドチェーン体制の確立、船舶輸送を基本とするモーダルシフトへの移行促進

○成果指標「県外出荷量のうち船舶輸送での出荷量の割合」

離島の流通条件の不利性解消につながる話なのか?

「生産地から消費地までのコールドチェーン体制」 に小・中規模の離島は入っているのか?

「船舶輸送での出荷量の割合」が輸送コスト低減と流通合理化の指標となるのか?

離島の流通条件の不利性解消の具体策はあるのか?

ex.流通施設の整備、輸送コストの低減施策、成果指標など

<地産地消による消費拡大>(素案P119120

地産地消離島過疎地域の経済循環、強いコミュニティ経済の実現に不可欠。

ホテル・飲食店等との連携強化については、施設や店舗のない離島過疎地域の生産者を含め、契約栽培の促進・支援を強化してもらいたい。

食育、特に給食を通じた地産地消の拡大は離島過疎地域の生産者も巻き込んだ展開に期待。

資源とアイディアを総動員し、「島内」「域内」「県内」など 異なるスケールエリアに則した多元的な地産地消を推進されたい。