2014年8月20日水曜日

中京大学(名古屋)にて講義/2014

7月11日(金)、名古屋の中京大学に招かれ、出前講義をしてきました。
今回も大変お世話になりました。
総合政策学部教授・佐道明広先生、法学部教授・古川浩司先生に、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

佐道ゼミ(3限)、佐道・古川合同ゼミ(4限)にて講義
演題:「沖縄県<国際都市形成構想>とは何だったのか」


中京大学社会科学研究所
研究課題:ボーダースタディーズによる国際関係研究の再構築
演題:「海洋島嶼圏・沖縄の振興をめぐる概況」

2014年5月15日木曜日

NPW広報(関連書籍の紹介)/『マリー・アントワネットの植物誌』

ニュー・パブリック・ワークス理事・川口健夫薬学博士(城西国際大学環境社会学部教授)の翻訳による新刊を紹介します。

「マリー・アントワネットの植物誌」

 エリザベット・ド・フェドー著 川口健夫訳 (原書房)



◇画像(本書より)


◇読売新聞書評(2014316日「本よみうり堂」)

 断頭台で処刑された仏王妃マリー・アントワネット(1755~93)。革命の嵐にのみ込まれる前は、ドレスや髪形、香水など様々な流行を生み出したファッションリーダーとしても知られている。
 その王妃、花や木などの植物に並々ならぬ情熱を注ぎ、園芸においても最新流行を発信していたらしい。ベルサイユ宮殿敷地内の“隠れ家”、離宮プチ・トリアノンを彩った貴重な草木を紹介した図譜集だ。
 バラやスミレ、ライラックなど80種の植物画を手がけたのは、当時の人気画家たち。中でも「花のラファエロ」とたたえられたルドゥーテ(1759~1840)の描いたバラ、ニワシロユリ、スイセンなどの花々は、写実的かつ優雅だ。
 自ら庭師集団を率い、配置まで指示した王妃の執着は、貴族たちの反発をかうことになる。後の悲劇的な運命を考えると、美しい花々にも哀感が漂う。


◇毎日新聞書評(2014511日「今週の本棚」)より抜粋

 書籍であり、図鑑でもある本書は、フルカラー、そしてパステルカラーの装丁に思わず目を奪われる。ソフィア・コッポラ監督の映画「マリー・アントワネット」で登場するお菓子の監修をしたのは、マカロンで有名なフランスの老舗菓子店「ラデュレ」であるが、その映画や菓子店の色彩を思い出してしまう一冊だ。
 本書には、悲劇の王妃マリー・アントワネットが丹誠込めて造り上げた離宮プチ・トリアノン(小トリアノン)に各国から収集した植物が、植物画の巨匠、ルドゥーテらの手で描かれている。それぞれの植物への解説としてのギリシア神話、ローマ神話などと関連する話も興味深いが、そのルドゥーテの麗しい写実的かつ芸術的な絵画を眺めているだけでもうっとりしてしまう。おそらく、花や植物に対して興味がない者にも訴えかける力がある。それらの断面図も描いているが優雅さを失わない。
 しかし、調香が専門の著者によって書かれた蘊蓄は興味を惹く。私たちがなぜ、かぐわしい香りに惹かれるのか。香水を愛するのか。その源も理解できる。人間は、他の動物と同じく、嗅覚に囚われた生き物だ。ただ、本書で触れられているが、各所で書かれている植物の薬効に関しては、根拠が乏しく、注意が必要である。昨今流行のアロマテラピーの効果にも関係する。
 王妃は女傑と名高いマリア・テレジアの娘であり、ハプスブルク家の自由な家風で育った。フランスの王室での窮屈な暮らしを疎んで、夫のルイ十六世により与えられた離宮プチ・トリアノンでの自由な生活に夢中になったことも理解できなくはない。王妃の故郷、ハプスブルク家の生活を再現したかったのだろう。王妃自らプチ・トリアノンの設計に夢中になった。
 しかし、各国からプチ・トリアノンに集められた植物には巨費が投じられていた。さらに「王妃の『村落』」は名ばかりであり、宮廷の窮屈さから逃れるための、王妃のお気に入りの人物だけが出入りできる自分勝手な場であった。これにも王族や貴族らから批判が集まる。王妃のプチ・トリアノンでの服装は、農婦にならった綿布で作られたもので、髪を解き放ち、麦わら帽子を被る。一見質素に見えるが、人工的な農婦を気取ったものでしかない。王妃は当時のファッション・リーダーであり、その服装は注目を集める。その不自然な「自然」は、プチ・トリアノンの造られた「自然」に繋がる。そして、この王妃が熱心に造り上げた庭園は、気まぐれな浪費であり、のちに民衆の反感を買うことになる。
 しかし、こう思わないでもない。以下は筆者の私見である。昨年、王妃マリー・アントワネットの故郷であるウィーンに赴いた。そこで、王妃の父であり、女傑マリア・テレジアの陰で用なしとされ不遇をかこったフランツ一世は、鉱石などの収集にいそしんだ。そしてフランス王妃の姉であるが、病弱であり婚姻戦略(ハプスブルク家は婚姻を通じ国家を強化した)に適さないと母のマリア・テレジアから冷遇されていたマリア・アンナは父と心を通わせ、その父のコレクションを引き継いだ。彼女には科学的なセンスがあった。二人の合作によって生まれたのが、ウィーンの自然史博物館である。その自然史博物館を見学し、その物量に圧倒された。不幸で、ただし裕福な人たちが、今の博物学、そして自然科学に貢献しているのではないかと想いを馳せる。マリー・アントワネットもそのひとりではないだろうか。

「マリー・アントワネットの植物誌」(A5判・244ページ)

刊行日:2014年2月28日
定価:4,104円(本体価格3,800円)

原書房オフィシャルサイト

2014年4月30日水曜日

NPW広報/「竹富町新庁舎建設のあり方検討有識者委員会」開催

2014年3月28日、「竹富町新庁舎建設のあり方検討有識者委員会」の第1回会合が竹富町役場で開催されました。


大学教授、ジャーナリスト、経済人など計10名のメンバーで構成される本委員会に、ニュー・パブリック・ワークス代表理事の上妻毅は委員長として参画することになりました。

有識者委員(五十音順)

 赤嶺  武  在沖八重山郷友会連合会会長
 池間 義則  八重山観光フェリー株式会社取締役会長
 今井 恒子  株式会社フロッサ代表取締役/一般社団法人オキナワ離島応援団理事長
 上里  至  株式会社沖縄県物産公社代表取締役社長
 越善 靖夫  青森県東通村長
 大城  肇  琉球大学学長
 大浜 一郎  石垣エスエスグループ代表取締役社長/八重山経済人会議代表幹事
 上妻  毅  一般社団法人ニュー・パブリック・ワークス代表理事 
 土屋  誠  琉球大学理学部教授
 三木  健  フリージャーナリスト/竹富町史編集委員



竹富町役場は、竹富町内ではなく、石垣島の港近く(石垣市美崎町)にあり、‘ヤドカリ庁舎’などと呼ばれることもあります。
9つの有人島を抱える「島嶼型」の自治体(16島1町)ゆえの特殊な状況ですが、同町にとって「役場庁舎移転問題」は、半世紀に及ぶ重大な懸案で、また、現庁舎の老朽化、特に耐震性能など防災面の機能不全から、建替えは不可避かつ喫緊の問題となっています。
初会合では、「庁舎を移転しても行政サービスは低下させない」、「各島の町民に不便・不自由をかけないサービスとネットワークを考える」、「庁舎というハコのあり方ではなく、島嶼自治体の行政課題を真正面から見据える」など、今後の論議の基本的方向は共有できたと思います。




(以下、上妻メモ抜粋)

◇16の島々、特に町民が暮らしている9つの島にとっての「新庁舎建設のあり方」を論議の前提とする。

◇役場の本質は建物ではなく行政サービス。どこに置かれようと、あまねくサービスが行き届くことが要件。

◇新庁舎の建設を機に、町民の皆さんに喜んでいただけるような新しい行政サービス提供のあり方を検討すべき。

◇求められているのは「庁舎」単体のビジョンではない。支所・出張所を含む9つの島々に対応するネットワークの構築など、「新竹富町役場」としてのビジョンが求められている。

◇むしろ庁舎を置かない島々を念頭に、行政サービスの向上を目指す町のビジョン、今後の取組みや事業実施に関するロードマップを明らかにする必要がある。

実質的な広域行政と言える「島嶼型」の地域構造と行政運営に伴う不利性の改善、16島1町ゆえの固有の課題の克服が問題の本質。

◇町民の福祉向上、竹富町全体の振興への視点とともに、「新庁舎建設」のあり方・方向を論議すべき。

9つの有人島、7つの無人島で成り立つ竹富町の姿は、沖縄全体の縮図でもあります。
同時に、海洋島嶼型の自治体として竹富町が直面する課題は、6,852の島々で構成される「島嶼国家・日本」のあるべき施策を様々な側面から提起するものと考えます。